「新しい事業領域の探索」のために
「戦略枠」を別建てして投資

島村会長Photo by Teppei Hori

 ここまでが「既存の事業の深化」であり、次に「新しい事業領域の探索」ですが、各事業部門に新しいビジネスチャンスを探索するための部署があったのを統合して「事業開拓部」とし、経営直下に置きました。

 この事業開拓部が新たなインキュベーターとしての役割を持ち、各部門に入って来る新たなビジネスチャンスの情報も、いったん事業開拓部に集め、中身を吟味しながら可能性を探り、ビジネス展開すべきかどうかを決めることにしました。

 通常の投資は償却費の範囲内に抑えることを原則としていましたが、成長のための「戦略投資枠」というものを別建てにして、既存の事業でも深化のために必要な投資はこの中から使いました。また、戦略事業の中では、CDMO事業(Contract Development and Manufacturing Organization/製造や製造方法の開発を受託・代行する組織や事業のこと)に傾注し、業界トップクラスに成長させました。

 実は、30年前にバイオ医薬品事業に進出したものの、泣かず飛ばずでしたが、2000年代に受託事業にモデルチェンジしたのが奏功しています。また、半導体では、露光の最新技術であるEUV(極端紫外線)に対応したマスクブランクス(ガラス基板)を開発するコンソーシアムに2003年に参加し、20年近くかかってようやくビジネスに結実したというケースもあります。
 
 このように製造業は、開発開始から、マーケット内である程度の規模に成長するまでに、非常に時間がかかるんです。そのため、長期的に何にコミットしていくのかをしっかりと考えることが重要です。素材の候補が1000あれば、その中で成功するのは1つか2つという非常に低い確率なので、いかにその確率を高めていくかということが、大きな課題ではないかと思います。

 幸い、現在伸びている電子や化学品の事業は、これまで非常に長く取り組んできたという素地があります。これも、「社会にとって意義があるのか」「自社に適したビジネスなのか」を粘り強く追求した結果です。その過程では、失敗を許せるか、長期に我慢できるか、といったことが問われますし、「もう撤退しなければならない」という厳しい決断をするときは、トップ自らがやめる決断をしなければなりません。経営者の責任は非常に重いのです。

 2021年には、2010年と比較し売り上げが5000億弱増え、利益構造も変わりました。2010年は利益の大半を電子部門が占めていましたが、現在の稼ぎ頭は化学品です。ポートフォリオ変革が成功したといえます。

 戦略事業は、4年前(2017年)には140億円の利益しかありませんでしたが、2021年に500億円を超え、コア事業(既存事業)と合わせた利益全体の4分の1を占めるまでに成長しました。2030年には、3000億円の利益のうちの50%超は戦略事業で出すというビジョンを描いています。やりやすい既存事業に傾斜しすぎず、いかに事業機会の探索に力点を置くかが重要です。