(3)過敏性腸症候群の人は、
緊急避難薬である下痢止めをお守りとして常備せよ

「下痢のときは、便を排出しようと腸がギューッと動くことによって痛みを感じる仕組みになっています。下痢止めには活発化した腸の動きをポンと止める働きがあります。市販薬でも悪くありませんが、たとえば、医者が出すロペミンなどは処方薬なので、さらに効果は高いです。

 ただし、薬が体に吸収されて効くまでには30分。効果自体も長時間、続くわけではありません。飲むならば、『ことが起こるであろう30分前』に服用を。また、下痢止めはあくまで対処療法なので、ひと月に1~2回下痢になるとか、トイレがない場所に限ってお腹がゆるくなるという軽めの症状の人向きの応急措置。頓服薬は根本治療ではありません。とは言え、過敏性腸症候群の人には“お守り”になります。カバンの中に下痢止めである止痢薬を常備しておく作戦もありですよ」

 さらに石黒医師は下痢や腹痛に悩む人にこうアドバイスする。

「下痢や腹痛に悩んでいる人は『自分はお腹が弱い』と落ち込みがちですが、僕に言わせれば弱いのではなく『腸の動きが良すぎる』だけです。いずれにせよ、便で悩んでいるならば、気軽に消化器内科を訪ねてください。今は良い薬も沢山あります。その際は『ウンコー日誌』をご持参くださいね。より診断が的確になり、快癒に近づくでしょう」

 便の悩みは誰かに相談しづらいため、余計に毎日が鬱々となりがちだ。けれども、ただ漠然と「お腹の調子がいつも悪い」と嘆いているばかりでは治るものも治らない。まずは、いつどんなときに、どんな症状を起こすのかを把握することが快腸への第一歩となるだろう。

 次回は「便秘」に悩む人への石黒医師からのアドバイスをお伝えする予定だ。


【監修】石黒智也(いしぐろ・ともなり)

通勤中の「お腹ギュルギュル」で絶体絶命!便意から逃れる特効薬とは

 日本内科学会認定内科医/同・総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医/H.pylori感染症認定医/日本がん治療認定医機構 がん治療認定医/日本消化管学会胃腸科専門医/緩和ケア研修 修了医。1979年、岐阜県生まれ。2005年、岐阜大学医学部卒業。総合病院での一般内科、消化器内科、救急医療の研修を経て、胃・大腸内視鏡検査及び治療件数で全国有数の昭和大学横浜市北部病院・消化器センターに入局。「痛くない、つらくない」内視鏡の挿入法などを徹底的に学ぶ。2016年、神奈川県茅ヶ崎市にて「湘南いしぐろクリニック」開設。現在、「新横浜国際クリニック」「湘南いしぐろクリニック 鎌倉院」と合わせて3施設の医院を運営する医療法人社団MBSの理事長を務め、早期がんの発見やお腹のトラブル撲滅のため、日々研鑽を積んでいる。趣味はプロ野球観戦、サーフィン、カラオケ。医大生時代は本気で芸人を志したこともあり、お笑い番組も大好き。