コツコツと業績を伸ばしてきた経営者が直面する「売上の壁」。
特に、年間の売上高が2億円から3億円のレベルに達すると、そこでピタッと成長が止まってしまう経営者が多いという。
そんなときに参考になるのが、【発売から18年、2万人以上の経営者に支持されるバイブル】として、待望の新装版が発売された『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』だ。
本稿では、上場経験のある経営者から熱烈な推薦を受けている本書の中から、経営の基礎である「設計図」思考の一部を紹介する。
社長は一人芝居をしてはいけない
「ビジネスモデル発想」「設計図発想」を本気で納得してもらうために、最近よく使っている例え話をしましょう。
私のところに相談に来られる経営者の方々には「一人芝居から劇団になるんですよ」と言っています。
2億円までは一人芝居。どんなお芝居にするのかを決めるのも自分、舞台の上に立って演じるのも自分。それも最初から最後まで、1人で演じっぱなしです。台詞の変更も自在ですし、アドリブだっていくらでも決められます。客席にいるお客様から喝采を浴びるのも自分。これがとっても気持ちいい。うまくステージを決められたときの快感はちょっと他には代え難い。
それに比べて10億円企業は劇団です。俳優が何人か所属していますし、舞台裏で活躍する裏方さんもいる。ところがその俳優さん、あまり演技が上手じゃない。飲み込みも早くはない。ましてや自分で自分の台詞なんて書けません。結局、あなたが芝居の台本を書き、稽古を付けてあげる必要があるのです。
あるシーンの中で、どう演じればいいのか。作品の全体像を把握してもらいながらも、俳優一人ひとりの仕事が分業されていることも、会社の経営と同じです。
社長にしかできない「演出」の仕事をする
このときの経営者であるあなたの役割は、劇作家兼演出家、です。こうなると自分自身が舞台に立つことはできなくなってきます。
大勢の人が関わってきますから、何でもかんでも自分勝手にはいきません。新しい芝居のためには新しい俳優が必要になりますし、俳優が育ってくれば、新しい活躍場所を求めてあなたの劇団を去って行ったりするかも知れない。また、お客様はあなたの劇団の芝居を求めているのであって、あなたの俳優としてのパフォーマンスを求めていない、なんてこともある。
ある意味気ままに過ごすことができた一人芝居時代に比べると、本当にいろんなことが変わります。一番大きいのは自分の機能=職業が、すっかり変わり始めることでしょう。俳優として演じることから台本を書き、舞台を演出し……へは大きな「転職」です。
現実の舞台の世界でも俳優は大勢いらっしゃいますが、それに比べて劇作家の数はそれほどでもありません。そして俳優から始まって劇作家になった人、は本当に数えるほどではないでしょうか? 極論ではありますが、演じる方が楽、なのです。
さらに会社の規模が大きくなれば、「劇団四季」のようになるわけです。連日、3つあるいは4つの劇場で芝居やミュージカルを並行して興行しています。そのいずれもがロングラン。半年から1年ぐらいは公演しています。
そんな状況の中では演出家だと言っても、すべての舞台を見ることは不可能です。そしてそれぞれの舞台にしても必ずダブルキャスト。同じ役を演じる俳優さんが2人、ないしは3人キャスティングされています。
一部のマニアな方は別として、来場するお客様は俳優を観に行くのではなく、「キャッツ」「ライオンキング」……などの舞台作品そのものを観に行くのです。劇団四季のトップとして、劇作家であり全体のプロデューサーを務められていた浅利慶太さんは亡くなりましたが、劇団四季の人気は衰えることがありません。
つまるところ、企業の成長に従って、トップである社長の仕事は何回か大きく変わっていきます。主演俳優から劇作家へ、さらには総合プロデューサーへ。名前だけではなく行動自体が変わってしまうことになります。
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ここに紹介したことのほか、『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』では、経営者が企業の成長のために考えるべき「設計図」とは何かをコンパクトに紹介しています。