日立アステモは、日立製作所の完全子会社だった旧日立オートモーティブシステムズと、ホンダ系部品メーカーのケーヒン・ショーワ・日信工業の3社が21年1月に統合して誕生した企業だ。今年9月までに日立が株式の一部をホンダとJICキャピタルに売却する予定で、ホンダの出資比率は33.4%から40%となり、日立と同等の出資比率となる。

 これは、実質的にホンダがアステモの主導権を握ることになるものだ。

 さらに、7月1日には、アステモの新社長に竹内弘平ホンダ前副社長が就任した。アステモは、EV駆動装置のイーアクスルなどを基幹製品として手掛けている。このEVにおける重要製品を軸に、サプライヤーとして大きな期待をかけているということだ。

 アステモは、元をただせば日立の自動車部品事業部門であり、日産と日立は同じ芙蓉グループとして歴史的つながりが深い。かつてはトヨタのデンソーに対抗して、取引も多かった日産の系列メガサプライヤーになる方向性を目指す動きもあったほどだ。しかし、結果的には、ホンダがEV戦略上のサプライヤーとして取り込むことになった。

 アステモは実質的にホンダが日立から取り込みを見せた動きの例ということになるが、一方で、ホンダはEVとの相乗効果が薄い事業おいて、部品企業のドライな売却も進めている。

 それが、まさに今回のヤチヨのケースといえるだろう。

 ホンダ関係者からも「まさか売却するとは」との驚きの声が上がっているが、実はヤチヨが初のケースというわけではなく、例えば22年には100%子会社でキーレスシステムドア部品などを手掛ける「ホンダロック」をミネベアミツミに売却している。