エニタイムフィットネスやカーブスとは
狙いが違う

 今回chocoZAPが発見したのは、その逆側のニーズです。安い料金でスキマ時間に手軽に運動をしたい。この領域は、これまでアメリカから来た二つのフィットネスクラブが新しいニーズを掘り起こしてきました。

 一つがエニタイムフィットネスで、「24時間いつでもジムが使えるようにしてほしい」というニーズに応えてくれました。もう一つがカーブスで、「男性の目を気にせずに気軽にエクササイズしたい」という女性のニーズに応えます。日本ではエニタイムフィットネスもカーブスも、会員数70万人超という一大勢力となっています。

 ただ、どちらも料金については業界水準からそれほど安くなるわけではない点で、ユーザーニーズに応えきっていないところがありました。

「安い料金でスキマ時間に手軽に運動をしたい」というニーズに本格的に向き合おうとしたのがchocoZAPで、月額3278円(税込み)で24時間使い放題、近所にあってスキマ時間にすぐに運動できるというのが、サービスの初期設計上の要点になりました。

 新規事業を設計する際には、出発点はまずこのニーズないしはロマンの部分をはっきりさせることが重要です。「そんなものがあったら絶対使いたい」という人が、かなりの規模で存在するのかどうかが鍵です。

 ちなみに私は、10年前ならこのコンセプトはドンピシャだったと思います。学生時代から運動はそこそこやってきたのですが、社会人になってスキマ時間で運動をするのに努力が必要になりました。自分の人生の中で一番このニーズにフィットできていたのが40代前半で、自宅にトレッドミル(ランニングマシン)を導入したときです。

 当時導入したトレッドミルは折りたたむとドア1枚分の大きさになるタイプで、これが自宅にあるおかげで忙しい日でも寝る前に経済ニュースを見ながら30分ランニングをして、その後シャワーを浴びて寝るというタイパのよい生活をすることができました。

 数年使ったトレッドミルが故障して粗大ごみに出すことになり、代わりにもっとコンパクトなステッパーを置いたところ、以前ほどは運動をしなくなってしまいました。かといってトレッドミルはそれなりに自宅の中で場所を占有していたので、自宅の近所にトレッドミルが使い放題の場所があれば、その方が当時の私のニーズに合致していたはずです。

 実際は新規事業開発の際には「そのようなニーズの人の属性や特性はどのようなもので、それが日本に何人いるのか?」をきちんと調査して把握しますが、そこは割愛してロマンの話はこれぐらいで切り上げ、そろばんの話に移りたいと思います。