作戦その3:
死後事務委任契約を結ぶ

 死後事務委任契約とは、本人(委任者)が元気なうちから、亡くなった後の事務処理などを信頼できる相手(受任者)に委ねる契約のこと。葬儀の手配や家財道具の処分、ペットの保護などさまざまな内容が委任できるが、最近はデジタル機器の処分も行ってくれるサービスが増えている。

 たとえば、三井住友信託銀行が2019年から提供している「おひとりさま信託」の場合は、パソコンやスマホのデータのほか、LINEやFacebookなどの削除や解約にも対応している。

「おひとりさま信託」におけるデジタル関連の死後事務目録ページ「おひとりさま信託」におけるデジタル関連の死後事務目録ページ Photo by Y.F. 拡大画像表示

 ファイルやデータ単位での削除や引き継ぎに応じてくれる定型のサービスはまだ見当たらないが、専門サービスに委ねられれば高い安心感が得られるだろう。

 ただし、遺族からの異議が届いた場合は、問題が解決するまで契約が履行されないのが一般的だ。前述の急死した夫の例のように遺族が必死に中身を確認しようとしている状況なら、受任者が強引に事を進めるということは、まずない。この方法を取る場合も、やはり託すものと隠すものの選別は欠かせないのだ。

 なお、友人に安易に死んだ後のデジタル機器の行く末をお願いするのも、同じ理由で避けたほうがいい。

 今回は3つの作戦を紹介した。いずれの方法を検討するにしても、重要なのは残された側に迷惑をかけないようにしっかりシミュレーションすることだ。迷惑をかけないほど棲み分けがしっかりしていれば、隠したいものに他人の目が向けられるリスクを極限まで小さくできるだろう。