リーダー経験が一度もないのに、人手不足で管理職にさせられてしまった。
まったく向いてないのに、自分に務まるのだろうか……。
そんなピンチに陥ったときの処方箋が、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』では見事に示されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回、本書を読み解くのは、企業現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント・横山信弘氏だ。最新刊『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』や衝撃のデビュー作『絶対達成する部下の育て方』などのベストセラー作家でもある横山氏は、『時間最短化、成果最大化の法則』をどう読み解いたのか。連載4回目は、「経験不足のままリーダーになってしまったときの対処法」をテーマに話を聞いた。(構成・川代紗生)

優先順位Photo: Adobe Stock

「優先順位のつけ方」で圧倒的な差がつく

──リーダー経験が一度もないのに、人手不足の影響から、消去法で管理職にさせられてしまった……というとき、どうすればいいでしょうか。

『時間最短化、成果最大化の法則』では、さまざまな仕事管理術が提案されていますが、その中でも「とりあえず、この法則だけは習得して!」というものがあれば教えてください。

横山信弘(以下、横山):絶対におさえておきたいのは、「優先順位のダブルマトリックスの法則」ですね。

 私もコンサルタントの仕事で、いろいろな会社の経営者・マネジャー層とやりとりしてきましたが、優先順位のつけ方で悩む人が、案外多いのです。

──管理職になると、自分の仕事だけでなく、部下の仕事まで管理しないといけませんし、どこから手をつけていいか、わからなくなりそうです。

横山:そういうときに、ぜひ取り入れてもらいたいのが、「優先順位のダブルマトリックスの法則」です。

 一般的に、目の前のタスクを、「重要度」と「緊急度」で分類し、そこから優先順位をつけていくことが多いですよね。

 まず、優先度1位は、「重要度も緊急度も高いタスク」。すばやい対処を求められていて、かつ、結果に対して影響度が大きいもの。

 それから、優先度4位は、「重要度も緊急度も低いタスク」。これは、時間が余ったときにやるか、もしくは「やらない」と決めてしまえばいい。

「緊急度」より「重要度」を優先するべき理由

──そうですね。優先度1位と4位は、決めるのも簡単だと思います。

横山:問題は、

「重要度が高く、緊急度が低いタスク」と、

「重要度が低く、緊急度が高いタスク」のうち、

 どちらを優先するべきか、ということです。

 ここで迷う人がいちばん多いのではないでしょうか。

──結果につながる、重要度の高いタスクに手をつけたいと思いつつ、やはりどうしても、急ぎの仕事に時間をとられがちです……。

横山:おっしゃるとおりで、管理職で仕事が忙しくなると、「重要度が高く、緊急度が低い」タスクは、後回しになりがちです。

 しかし、木下さんは本書の中で、「緊急度より重要度を優先すると成果が上がる、と覚えておこう」と提案されています。

 重要度が高い仕事をどんどん片づけていかないと、その仕事はいつしか緊急度を伴ってあなたにのしかかってくる。そうなった場合は、否応なく今すぐ対応せざるをえなくなる。
 これが続くと「重要度は低いが、緊急度が高いタスク」に常に忙殺され、「忙しいが成果は低い」人になってしまう。(P.53-54)

横山:私も、この考え方はとても大事だと思っています。

 とくに、管理職になればなるほど、意識すべきポイントです。

上司は「すぐ結果を出す」だけでは務まらない

──横山さんにとって、「緊急度は低いが、重要度が高いタスク」とは、具体的にはどんな内容でしょうか?

横山:たとえば、いちばんわかりやすいのは、部下や後輩の教育ですよね。

 仕事のノウハウを教えたことが、すぐに数字につながるわけではありませんが、チームで結果を出すには、部下の教育は必須。

 また、読書や勉強会への参加など、自己研鑽の時間をどれだけつくれるかも、重要です。「いつでもできる」と後回しにしがちですが、のちのち大きな影響をもたらす要素です。

 まとめると、視座を高くし、「投資」の視点を持てるかどうかが、上司として結果を出せるかどうかの分岐点ではないかと、私は考えています。

「今すぐ結果を出す」ことばかりを考えるのではなく、スキル開発をしたり、人材育成をしたり、経験を積んだりと、将来的なリターンを見越して動けるかどうか。

 いちプレイヤーとして働いていると、目の前のことに没入しがちですが、管理職は、目先の利益にばかりとらわれていると務まりません。

 目標達成するために、淡々とやるべきことをやらなければなりません。

 そのためには、タスクにやみくもに手をつけるのではなく、成果を最大化できる優先順位のつけ方を学ぶ必要があります。

 本書には、他にも、「10分以内に完了するものは”今すぐ”やる」など、効率的な優先順位づけのルールも紹介されています。

 管理職になったばかりで不安というとき、まずは、この「優先順位のダブルマトリックスの法則」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

「管理職に向いてない人」と即バレするNG習慣・ワースト1
横山信弘
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。