PayPayには
ビジネスモデルの欠陥がある

 PayPayの場合、二つの形で外部のクレジットカード会社に対して支払いが発生します。一つは、ユーザーがPayPayにクレジットカードからチャージした場合。そしてもう一つが、チャージをスマホの利用料にまとめた人の携帯電話料金の支払い手段がクレジットカードになっていた場合です。どちらの場合もPayPay株式会社が利用者の代わりにカード会社に手数料を支払うことになります。問題はその手数料率です。

 ここでもう一つ、単純計算をしてみましょう。PayPay株式会社に1000億円のクレジットカード手数料という費用が発生していたとして、その料率が2.50%だったと想定します。この前提で逆算すると、クレカ経由のチャージ規模は4兆円になります。

 ないしは、もっと交渉して2.00%ぐらいの料率になっているかもしれません。それでもクレカ経由のチャージ規模が5兆円なら、やはり1000億円の営業費用が発生します。個別企業の料率はカード業界ではトップシークレットなのですが、おそらく、これに近いことが起きているのでしょう。

 そこで一歩踏み込んで、シミュレーションしてみます。来年、PayPayがものすごく使われて流通額が倍の15.8兆円に増えると仮定します。これは大躍進です。するとPayPay株式会社の営業収益は、倍の2512億円近辺になります。そう仮定しましょう。

 それだけ使われるということはユーザーもそれだけチャージしますから、クレジットカード会社への支払いも1000億円の倍の2000億円に増えます。

 いよいよPayPay株式会社は営業黒字になるのですが、その黒字額はシミュレーション上、どれくらいになると思いますか?

 計算してみると、25億円です。

 累積損失で過去に2755億円も溶かしてしまった会社が、今よりも売り上げが倍に増えても25億円しか稼げないのだとしたら、これはビジネスモデル構造上の欠陥です。

 つまり、冒頭お話しした改悪の背景事情はここにあります。

 急成長するスマホ決済市場で3分の2の利用シェアと圧倒的な地位にありながら、他社のクレジットカードでチャージできる以上はまったくもうからない。むしろユーザーがチャージするたびにライバルのクレジットカード会社が「濡れ手で粟(あわ)」でもうかる構造です。

 日本のキャッシュレス市場は、2025年には120兆円を超えていくでしょう。スマホ決済はこの先、全体の4割を占めるところまで行くと私は考えています。その3分の2をPayPayが押さえればその時代のPayPay株式会社の流通額は32兆円。そうなる前に、現在の「他社に利益が流れるビジネスモデル」は修正が必要です。

 そこで、PayPay株式会社としては何としても2025年1月には、PayPayでの他社クレジットカードからのチャージをなきものにしたいわけです。