PayPayには「加盟店の手数料アップ」以外にも
逃げ道がある
さて、とはいえ読者の皆さんには一つ疑問が湧くかもしれません。
「加盟店から1.60~1.98%と低い手数料しか取らず、利用者に1.50%もポイント還元していたらやっぱり赤字体質なんじゃないのか?」と。
それを考えると今後、加盟店の手数料を他社並みに値上げをするという、さらなる改悪が起きる可能性があるかもしれません。しかし、それが起きないかもしれないとも私は考えています。
実は加盟店手数料以外にPayPayにはもう一つ、重要な手数料源が存在するのです。
それが、メーカーや加盟店に送客することで得られるキャンペーン手数料です。これをPayPay株式会社では、ポイント営業部隊が担っています。
今年6月、対象店舗で花王の商品をPayPayで買うと30%が戻ってくるキャンペーンがありました。主だったドラッグチェーンだけで24チェーンが参加した大規模なキャンペーンで、6月の1カ月に複数回に分かれたとしても累計で3000円以上の商品を買えば、30%分のポイントがもらえるお得なキャンペーンでした(上限は1500ポイント)。
これは、仕掛けた花王の側に大きなメリットがあるキャンペーンです。というのもPayPayは国内最大級のユーザーが使っていて、24チェーンというのは国内の大手ドラッグチェーンをほぼカバーする規模なので、全国的にこの1カ月、ライバルのP&Gやライオンから花王に需要が流れたことになります。
このポイント還元による送客キャンペーンは、さまざまな形でメーカー、大規模チェーンから自治体、地元のお店まで導入できる仕組みをPayPay株式会社は整えています。そして、実はキャッシュレス事業を握ろうとする事業者にとっては、「顧客の行動を左右するポジションにつく」ということこそがビジネスモデル上の最大の要所なのです。
それがわかっているからこそ、PayPayは100億円キャンペーンから始まり、最速で業界の圧倒的なトップの地位を確保したのです。
ドミナントな地位を手に入れ、ユーザーの利便性を極限まで上げた代償として、PayPayはクレジットカード会社への莫大な支払いを抱えている。この状況に頭を悩ませた経営陣が状況を最速で打破しようと動いた結果が、5月の改悪騒動につながりました。
その第一幕は経営判断ミスで延期に終わったのですが、第二幕以降、経営陣はこの問題をどう乗り越えていくのか?
PayPay株式会社の試練は、全体的に見るとこのような構図の問題なのです。