合理的に考えて影響が出ることは考えられない

 2021年の放出決定から2年あまり、トリチウムの安全性が問題になってきた。福島第一原発から出た“汚れた水”は、多核種除去設備(通称ALPS)を使って浄化するが、トリチウムはそれでも除去できない放射能物質の一つである。

 日本政府や東京電力はトリチウムを「自然界にも存在する水素の仲間」として説明し、今回の海洋放出に当たっては、トリチウムの濃度を国内規制基準の40分の1に薄めるので安全だとしている。

 もっとも、トリチウムの海洋放出は今に始まったことではない。過去、日本の原発でも、世界の原発でも冷却水とともに海に流してきた。日本には「世界の原発からも日本を上回る量の排水を行っている。今さら騒ぐのはおかしい」という意見もある。

 そこで改めて茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答だった。

 一方で見逃せないのは、トリチウムも含め、研究は“予算”に左右されるという一面が潜在するということだ。