「寝る前のスマホ依存」から抜け出すには?

【精神科医が教える】「眠れないスパイラル」から抜け出す方法とは?Photo: Adobe Stock

──睡眠不足はどのようにすれば解消していけばいいでしょうか。

川野:生活習慣を見直すことが肝になりますが、寝る前のスマホをやめるだけでも、ぐっと睡眠の質は上がりますよ。

──やはりスマホですか! 寝る前にスマホを見るのは良くないと思いつつも、やはり気になってしまってつい見てしまいますね……。

川野:わたしたち人間は、手を伸ばせば届いてしまう範囲にあるものを我慢することはとても難しいものです。

そういうわけで、スマホを簡単には届かない場所、たとえば、隣の部屋に置くとか廊下に置くなど、そういう工夫をして遠くに置くようにしましょう。

充電中のランプといったわずかな明かりでも、夜の真っ暗な中では光刺激になるので注意が必要なんです。

──スマホ依存を断ち切ろうとわざと遠くに置いても、「やっぱり動画が見たい!」となって、スマホを取りに行ってしまう人はどうすればいいでしょう?

川野:SNSは中毒性があるので、見ないと気がすまない状態になってしまいますよね。

スマホのブルーライトの刺激は、たとえ画面を暗めにしていても、メラトニンの分泌を妨げてしまうんですよ。

そうやってどんどんメラトニンが出てくる時間帯が後にずれていって、いわゆる「睡眠相後退症候群」、英語では「DSPS(Delayed sleep-phase syndrome)」という状態に到る危険性が高くなっていくんです。

夜寝る前は「紙の本」がおすすめ

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──その悪循環を止めるための第一歩として、スマホを別の部屋に置いてすぐに手に取れない状況にするということですね。

川野:そうですね。効果的だと思います。

もし夜寝る前に何か見たい、ということであれば本のほうが圧倒的にいいでしょう。電子ではなくて、紙のほうです。

──紙のほうがいいんですね。

川野:スマホのブルーライトが出ていないからですね。

小さいころに本を読んでもらって寝ついた経験のある人もいると思うのですが、自分自身で安心できるような本を読むのがおすすめです。

心理カウンセラーの大嶋信頼先生の書かれた『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』は、「眠り」をテーマにした本ですが、「眠り以外のこと」に意識をそらすことによって心を落ち着ける手法は、長年の不眠に悩まされてきた方にも大きな助けとなるのではないかと感じました。

私も読んでみたのですが、すっと自然な睡眠に入れる感覚になりました。

おそらく、大嶋先生が本書の随所に、無意識のレベルに働きかけて眠りを誘う「キーワード」や「フレーズ」を散りばめておられる効果も大きいのではないかと思います。

眠りの問題を解決したいと願っている方にこそ、ぜひご一読いただきたい1冊です。

川野泰周(かわの・たいしゅう)
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職
精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・医師会認定産業医。
1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。
主な著書に『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)、『半分、減らす。「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる』(三笠書房)、『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。