眠りたいのに眠れない、ストレスがたまりがちな人におすすめなのが、『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』(大嶋信頼著)だ。著者は著書累計55万部を突破している人気心理カウンセラーの大嶋信頼氏。最新作の本書では、心理学的なアプローチによって、読むだけで眠くなるメソッドや眠りをうまく活用する方法を紹介。「よく寝られて健康にいい本」「ものすごい安心感に包まれた」「睡眠の意味づけが変わる1冊」といった感想が寄せられている。今回は本書の発売を記念して、睡眠クリニック「RESM新横浜」で副院長を務める、精神科医で禅僧の川野泰周氏に、「眠り」の重要性や本書の活用法などについて聞いてみた。(取材・構成/林えり、文/照宮遼子)
メンタルと睡眠の切っても切れない関係とは?
──9月に入ってからも暑くて寝苦しい夜が続いていますね。眠れていない状態が続くと、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、不安な気持ちがわいてきたり、といったこともありそうです。
川野泰周(以下、川野):そうですね。しっかり眠れていないと、ちょっとしたことで落ち込みやすくなる、といった心の状態になる人も多くいます。
また、メンタルの状態が良くないと、早い時間に目が覚めてしまったり、逆に夜眠れなくなってしまったりすることがあります。
眠れないことがメンタルの状態を悪くし、そしてメンタルの悪化によりさらに眠れなくなるという負のスパイラルを引き起こしてしまうんです。
──最近、「睡眠負債」という言葉をよく聞きます。
川野:睡眠負債とは、「毎日の睡眠不足の蓄積」のこと。
長期間にわたって睡眠不足が続き、この睡眠負債が蓄積されることで、健康状態が悪化するリスクが高くなるのです。
睡眠の借金は、そう簡単に解消できないものなんですよ。
実は、1日わずか30分か1時間ずつ睡眠が足りないだけでも、ものすごくパフォーマンスを低下させてしまいます。
しかし、みなさんは「睡眠不足はちょっとだから、まぁ何とかなるよね」と思ってしまうわけです。
──たしかに……。自分が睡眠負債を抱えているかどうかはどうすればわかりますか?
川野:たとえば、休日になるといつも起きる時間よりも2、3時間以上多く寝てしまうという場合、睡眠負債を抱えている徴候と考えられます。
睡眠が足りている人は、たとえ休日であってもいつもの時間に起きられるものだからです。
──週末に寝だめをして、睡眠負債を解消するのは「アリ」でしょうか?
川野:睡眠負債を取り返すための睡眠は、取らないよりは取ったほうがいいと思います。
でもそれだけ長い時間を1日の睡眠で取ってしまうのは、脳内におけるメラトニンの分泌を不安定にさせるリスクがあり、寝だめ自体が翌週の睡眠の質に影響を与えかねないのでそれも心配ですね。