上司が忙しそうにしていると、声をかけづらい。でも、今日中に確認したいことが……。上司をつかまえるのも仕事のうちとはいえ、どんな言い方がいいのかと悩む人も多いだろう。優秀な人は、どうやって上司とコミュニケーションを取っているのだろうか。
そんな職場の悩みを抱えている人にぜひ読んでもらいたいのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、職場の「あるある」なお悩みを、木下氏に相談させてもらうことにした。「仕事が遅くて困っている」から「部下が動いてくれない」という悩みまで、その場しのぎの対策だけでなく、根本的な問題解決策を教えてもらおう。
連載7回目は、「上司とのコミュニケーションのコツ」だ。(構成・川代紗生)
「今いいですか?」が一番困る理由
──上司がバタバタと忙しそうにしていると、声をかけづらい。でも、今日中に確認したい資料が……。など、悩んでいる人は多いと思います。
20年以上、経営の最前線で社員を指導してきた木下さんですが、どんなタイミングで、どんな言葉だと、「この人、仕事できるな!」と思いますか?
木下勝寿(以下、木下):まず、上司であろうと誰であろうと「忙しい相手」に対しては「所要時間ベースで会話する」と肝に銘じるといいと思います。
たとえば、「今いいですか?」といったざっくりした言い方は最悪なのですぐにやめることです。
1分ですむ話か、1時間かかるのかわからないと、上司も判断しにくい。
おすすめは、「今、1分いいですか?」です。
──具体的に「1分」と伝えるんですね。
木下:上司にイエスかノーで答えてもらえればOKなら、「今、1分いいですか?」がベストだと思います。
上司も自分の決裁がおりないことで、仕事が滞ることは避けたいはず。
だから、1分で判断できることなら、すぐに対応してくれるでしょう。
上司に30分時間を取ってほしいときは?
木下:この「今、1分いいですか?」は、30分以上かかる案件に対しても使える言い方なんです。
──そうなんですか。
木下:まず、「今、1分いいですか?」と声をかけてから、
「〇〇の案件で、今日中に決裁していただきたいことがあります。
検討にはおそらく30分くらいかかると思いますが、
どこかで時間を取っていただくことはできますか?」
と聞くのです。
これなら「今日中に決裁しないと、この案件が滞る」ことも同時に伝わります。
そのうえで「今日は時間が取れないので、明日にしてほしい」と上司に言われたら、「この案件は、優先順位を下げていい」と上司が判断したということです。
──そうか。この聞き方なら、上司の優先順位も確認できるわけですね。
木下:とにかく「どのくらいの時間がかかるのか」が不明なのが一番判断に困るので、はっきりと「これくらいかかります」と言ってもらうと、「この人は仕事できるな」と思いますね。
「優秀な人」のメールは、2段階
──「この人、上司をつかまえるのがうまいなあ」「こういう声がけをされると、気持ちよく仕事できるなあ」と思った「敏腕部下」はいましたか?
木下:仕事がすごくやりやすい部下がいたんです。
特徴的なのは、メールの書き方でした。
その人のメールは、2段階に分かれていました。
──2段階とは?
木下:まず、1段階目に、「状況報告をします」と、現在の状況が一通り書かれているんです。
次に2段階目で、「上記をふまえて、社長にご判断いただきたい点は3つです」と、こちらが決裁するべき項目が明確に書かれていました。
1. Aの件について。イエス、ノーでお答えください。
2. Bの件について。イエス、ノーでお答えください。
3. Cの件について。イエス、ノーでお答えください。
というように非常に答えやすいんです。
しかも、
「このようにやっていこうと思っているのですが、これでいいかどうかご判断ください」
と自分で選択肢まで考えたうえで、それをイエスかノーだけで答えさせようとする。
こちらも短時間で判断できるので、とてもありがたかったです。
私も「1イエス、2ノー、3イエス」というように、一言書くだけですむので速返できました。
──すごいですね。逆に、どんなメールだと答えにくいですか?
木下:前半の話ともつながるのですが、「これ、どうしたらいいですか?」など、ざっくりとした聞き方は困ります。
「まず、どういう状況なのか教えて」
「今、どこまで検討が進んでるの?」
など、メールを何往復もしないと答えが出せないと、時間ばかりかかってしまいます。
できるだけ、メール1回の往復で完結するような伝え方を意識できるといいと思います。
・1段階目:状況説明
・2段階目:選択肢の提示
という書き方がおすすめです。
仕事には「絶対にこうしたらうまくいく」といった、はっきりした正解はありません。
上司も、現場の状況をすべて把握できているわけではない。
だからこそ、上司以上に現場を見ている担当者の考えるベストな選択肢を聞いたうえで判断したいのです。
『時間最短化、成果最大化の法則』でも「1時間集中すれば必ず答えが出る法則」がありますが、ほとんどの問題は1時間集中して考えれば、必ず答えが出ます。
「どうしていいかわからない」と悩むのは、途中で考えるのをやめてしまうから。
自分で考えて答えを出す前から上司に「どうしたらいいですか」と聞くのではなく、自分で考えて出した最善の答えを上司に提案し、それに対して「イエス」か「ノー」の判断をしてもらう。
このスタイルが身についていると、上司とのやりとりもスムーズになると思います。
本書には、「仕事がデキる」「優秀」と呼ばれる人たちが身につけている思考アルゴリズム(考え方のクセ)を一通りまとめました。
もっと成長したい、仕事が速くなりたい、圧倒的な成果を出せる人になりたい。
そんな人に、ぜひ一度、ページをめくってみてほしいですね。