そこで、Sさんの話の中によく出てきた「独身だから……」という言葉について、最近誰かに何か言われたか質問したところ、次のような答えが返ってきました。
「私の親や親戚は、そういうことは一切言わないし、プレッシャーをかけてくるようなこともありません。
だから誰かに言われたというより、ネット記事とかブログ、SNSで見かけるコメントで傷つくことが多いです。
これだから独身女は~とか、やっぱり独身男は~とか。
結婚していないというだけで、世間から下に見られているというか、ばかにされているように感じて悔しいです」
Sさんの場合は、親の影響よりも、世間の影響を強く受けていました。
ブログやSNSといった匿名性の高い媒体で発信されるものの中には、心をグサリとえぐられるような攻撃的な発言や、極端で強烈な意見、他人に使うべきではない辛辣(しんらつ)な言葉が使われていることが多々あります。
匿名性が高いからこそ、現実には言えないことが言えてしまう(書けてしまう)場所、それがネットの世界なのです。
だから、そのような意見を見聞きしても「気にするな」というのが無理な話なのです。
どんなに心が強い人でも、たとえ親が味方になってくれていても、批判的な意見ばかりを目にしていたら、いずれ心が壊れてしまいます。
原因を減らす方法で
疲れにくくなる
世間体が気になりすぎる原因が何かを見つけることができたら、次はその原因を少しずつ減らしていく方法を考えてみましょう。
そうすることで、気になりすぎる状態から抜け出すことができます。
世間体がまったく気にならないわけではないけれど、今ほど気にならなくなるだけでかなり疲れにくくなっていきます。
例えば今回のSさんのケースでいえば、ネットから得られる情報を減らすことが有効です。
それだけでも「こんなふうに思われるのでは」と世間体を気にして行動を決めることは減り、自分の気持ちやメリットを優先して、自分軸で行動できる回数が増えます。
ただし、いきなり「世間体が気になるような情報を一切見ない」と決めるのはハードルが高いですから、まずはネットを見る頻度を減らす自分なりのルールを1つ設けてみましょう。
例えば、「疲れている時は見ない」「落ち込んでいる時は見ない」というふうに自分の体調を優先したり、「夜寝る前は見ない」「朝起きてベッドの中では見ない」など場所や時間でルールを作ったりするのもいいでしょう。
一度にガラリと行動を変えると、長続きしなかったり挫折しやすかったりしますから、1つずつ、少しずつ行動を変えてみてくださいね。
精神科クリニックに併設のカウンセリングルームで10年以上、心理カウンセラーとして勤務した後、独立。現在は人間関係、親子問題、機能不全家族専門カウンセラーとしてメールでのカウンセリングを中心に活動。メールでのカウンセリング、対面カウンセリングともにいつも予約がいっぱいで、現在も数か月待ちの超人気カウンセラー。
著書に『あなたはもう、自分のために生きていい』(ダイヤモンド社)などがある。X(旧Twitter)@Poche77085714
※本稿は、Poche著『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。