「学校に行きなさい!」が
子どもをさらに追い詰める

 とはいえ、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは思い詰めず穏やかに…といっても限界がある。親として、子どもとどのような向き合い方をするのがベストなのか?

「まずは『話を聞いて、寄り添う』こと。不登校は本人がさほど気にしていないように見えても、実際すごくつらくストレスもかかるものです。休みを重ねれば気持ちは焦り、落ち込み、さらに不安感も強くなって動けなくなるという負のループに陥ります。そういう状態の子どもに『学校に行きなさい!』と頭ごなしに強制してもさらに追い詰めてしまうだけなので、まずは『不登校=子どもの心身のSOS』と捉え、共感的態度を意識してみましょう」

 無理に家庭内のみで解決しようとせず、学校側や不登校児童のための適応指導教室、民間団体が運営するフリースクールなどの外部機関も頼り、風通しをよくすることも重要だ。

「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」

 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという。

「不登校生徒の保護者の方に話を聞くと『教育委員会に紹介されたスクールソーシャルワーカーを頼ったらお子さんと相性が良く、家でも明るく過ごせることが増えた』ということもあったようです。保護者と子どもと学校という三者だけでなく、子どもに合った支援方法を提示できるように、選択肢を増やしておくことは大切です」

 具体的な解決策を模索するとともに、不登校のメリット・デメリットを知っておいた方がいいだろう。

「明確なデメリットとして学校の授業に相当する学習時間を自宅で確保するのは非常に難しく、多感な時期に不登校による心理的ストレスがかかることは見逃せません。とはいえ、多様な生き方が今は肯定されている時代であり、不登校になっても人生が終わるわけではない。不登校を乗り越えて活躍している方も多いです。不登校が悪いことだと考え込みすぎることが一番良くないことなのではないでしょうか」

 昨今、SNS上では「学校に行かないこと」を肯定するインフルエンサーや著名人のエピソードも増えている。「不登校=悪」という前提自体が、変化のときを迎えているのかもしれない。

「これは『不登校日誌』にも書いたのですが、不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」

 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう。