歴史小説の主人公は、過去の歴史を案内してくれる水先案内人のようなもの。面白い・好きな案内人を見つけられれば、歴史の世界にどっぷりつかり、そこから人生に必要なさまざまなものを吸収できる。水先案内人が魅力的かどうかは、歴史小説家の腕次第。つまり、自分にあった作家の作品を読むことが、歴史から教養を身につける最良の手段といえる。
直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、歴史小説マニアの視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
本を読むと
教養が身につく
【前回】からの続き 歴史小説を読むと、人生に必要な教養が身につきます。ただ、欲をいえば、歴史小説以外にも、たくさんの本を読んでおくのが理想です。
私は以前、日本テレビ系『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの? 2時間SP』に出演して、全11問すべて正解し、賞金300万円を獲得した経験があります。
知識を組み合わせて
答えを導く力
正直にいうと、後半の4問はまったく答えがわかりませんでした。たとえば、これが10問目に出た理科の問題です。
A:ブドウ属マスカット、B:イチゴ属キイチゴ、C:リンゴ属ナシ
当てずっぽうで答えたら確率は3分の1ですが、私は読書で得たさまざまな知識を組み合わせて、仮説を立ててみました。
「うーん、イチゴ属キイチゴというのは、伝来の時期が別な気がするなぁ」
「ナシは千葉とか茨城の生産量が多かった気がするけど、リンゴで有名なのは青森とか長野。気候が違うんじゃないか」
「そういえば、何かの本でマスカットもブドウも同じ地方、同じ土で栽培できるって書いてあったような……」
断片的な知識が
教養に変わる
そんな断片的な知識を組み合わせて「A:ブドウ属マスカット」という解答を導き出し、見事正解できたのです。
本は1冊だけから学びとるものではなく、複数冊の知識が重なることで、雪だるま式に効果を発揮します。
「あの本に書いてあった話は、この本のここにつながるのか」
「あの著者の考えを応用すれば、この出来事はこう解釈できるはず」
こんな具合に、たくさんの本を読んで得た知識が、ある地点を境に爆発して教養へと変わるときがやってきます。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。