2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります(発売は8月2日)。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。
領収書か、レシートか?
ある経営者から次のような質問をいただきました。
「いつも行く店で、これまでは手書きで領収書をもらっていましたが、インボイスに向けて『紙の領収書をやめる』とのこと。レシートで対応するとのことです。なぜこういったことになるのでしょうか?レシートでも大丈夫なのでしょうか?」
まず、経費の証拠は、レシートでも領収書でもかまいません。日付、店名、内容、金額があれば、レシートでも十分です。これは、インボイスには関係なく、これまでも同様でした。レジで「領収書をください」とお願いする必要はありません。
今回、手書きの領収書をやめたのは、おそらく、インボイスを機に、お店側も効率化したいということでしょう。手書きの領収書で、インボイスに対応することももちろんできます。
しかしながら、従来の領収書の用紙にはインボイスの番号が通常入っていません。この番号(T+13桁)を手書きするのは大変です。
かといって、領収書の用紙を別途つくるのもコストがかかります。それならば、いっそ紙の領収書を廃止して、レジから出るレシートに統一したほうが効率的です。
また、紙の領収書のままにして、インボイスの番号のはんこをつくって押すということも考えられます。実際、はんこの受注が相次いでいるとのことです。
ただ、問題もあります。