政府としては「国民の得」をギリギリまで下げ
「寄付のうまみ」を最大化させたい
「そもそもふるさと納税って何?」というところから話を始めます。公的な説明としては「自分の生まれ故郷や、さまざまな事情からサポートしたいと考える場所など、今住んでいる場所とは違う自治体に寄付の形で住民税を納税する制度」です。
ただ、この説明は実態には合っていないかもしれません。大半の読者の方は、こう捉えているのではないでしょうか?
「2000円払ったら、あとは住民税の上限まで実質無料でいろいろなものを買うことができる官製通販だ」という考え方です。
たとえば住民税を約5万円納税しているような方(年収460万円近辺の単身世帯の方など)は、ふるさと納税で5万円使って(?)しまってもお金は2000円しか減りません。ふるさと納税の返礼品は3割が目安なので、その5万円で1万5000円ほどの各地の名産品をゲットすることができます。
2000円で1万5000円分の牛肉やうなぎやスイーツなどが手に入るわけですから、ふるさと納税制度が人気になるのも不思議はありません。実際、昨年度のふるさと納税の受け入れ額は9654億円で、おそらく今年は1兆円を超えてくるでしょう。
さて、ここからが本題です。
ふるさと納税は私たち国民からみればお得な官製通販なのですが、政府からみれば地方自治体の活性化のために作った制度です。ですから、自治体に十分な寄付金が残らないと政府から見れば意味がありません。今回を含め、これまで行われてきた改悪と言われる制度変更も主にこの課題を見据えた変更です。
簡単に言えば、以前目立っていた返礼品の高額化競争を一定レベルに抑えるために2019年に返礼品を「市場価格が寄付額の30%以下の地場産品に限定する」とルールを改めたのです。そしてこの10月からは、それに加えて「総経費で50%以下」という新しい上限枠を定めました。