自治体の勝ち負け問題
「平等主義」は不要ではないか
実はこの泉佐野市問題は、もう少し大きな別の論争を呼んでいます。自治体の勝ち負け問題です。
ふるさと納税受け入れ額上位の自治体は都城市、紋別市、根室市など九州と北海道に集中する傾向があります。九州の肉牛や酒、北海道の海産物など商品力のある地場商品を持つ自治体が有利になっています。その結果として上位20位の自治体で寄付全体の2割を占めるといった寡占化が進んでいるのです。
一方でふるさと納税が急成長する中で、大都市圏では逆に住民税の流出問題が悪化しています。東京の23区は特にそのデメリットをダイレクトに受けるので、税収減に対して文句を言う区長も出始めています。
この状況に危機感を覚えたのでしょうか。京都市がふるさと納税に本腰を入れ始めたことが話題になっています。京都市の2023年の全国順位は調査によれば7位。もしこのまま京都市のふるさと納税に本気スイッチが入ってしまったとしたら、京都というブランドが持つ商品力を考えれば全国1位に躍り出ることは造作もないことでしょう。
こういった状況から、ふるさと納税に関して、「もう少しまんべんなく各自治体が潤うように分配のメカニズムを考え直したほうがいいのではないか」という議論が高まり始めています。
これは、日本人的な感覚としてはよくわかる議論です。しかし、私はその議論は逆に不要なのではないかと考えます。
地方創生という課題に立ち戻って考えれば、ふるさと納税という地方を活性化させる仕組みの登場を活用して、そこでがんばった自治体が報われるべきだという考えです。
全国には都道府県と市町村で合計1765の自治体があります。その中で上位20の自治体がルールの中で頑張って地場産品の商品開発を行って成功して、その結果、全体の2割の寄付を獲得するようになった。そのことをもって全国トップの都城市は素晴らしいと考えるのか、それとも都城市はけしからんと考えるのかといえば、前者の考え方の人が増えたほうが日本の地方経済はより発展するはずです。
これは民間企業であればあたりまえのことです。
業界に1765の企業があって競争をする中で上位20社がシェア2割を占めるようになる。それをもってあまり努力をしていない結果として零細企業から抜け出さない会社の経営者たちが「こっちに仕事をよこせ」と叫んでも、誰も共感しない話ではないでしょうか。
むしろ望ましい展開としては、今、負け組になりかけている自治体の中から「うちも頑張って新しい地場商品を生み出して、ランキング上位20を目指そう」という動きがどんどん出てくることです。勝ち組の自治体のリーダーたちを総務省の幹部に抜擢すれば、さらに地方創生は加速するかもしれません。
最後に政府に一つ提言しますと、10月の改悪に続いて、11月には改善と称して海産物のふるさと納税の返礼率を当面50%ぐらいに上げたらどうでしょうか? 福島第一原発の処理水排出問題で全国の海産物の加工工場が倒産する前に、即効性のある政策は打ち出しておいたほうがいいと私は思います。