岸田首相「バラマキ経済対策」は的外れだらけ!賃上げ、少子化解消がほど遠い理由Photo:Pacific Press/gettyimages

岸田文雄首相が、新たな経済対策を策定するよう閣僚に指示した。物価高や少子化への対策、国土強靭化などを含めた“5本柱”を重視するという。だが、中には「支持率向上のためのバラマキ」だとしか思えないものもある。そうした対症療法では“真の課題”は解決できない。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

岸田首相の「新経済対策」は
対症療法にすぎない

 岸田文雄首相は9月26日の閣議で、新たな経済対策を策定するよう閣僚に指示した。

 今回の経済対策では「物価高から国民生活を守る対策」「持続的賃上げ、所得向上の実現」「国土強靭化」などの“5本柱”を重視するという。

 しかし、これらの方針は「解散・総選挙を意識したバラマキ」だと野党などから批判されている。そして、この批判は一理ある。

 物価高に苦しむ人々や、経営が傾く産業を救うのは政治の重要な役割だ。だが、バラマキによって国民を救済しても「カネが尽きたら、またカネがいる」の繰り返しとなる。ただでさえ日本政府は多額の借金を抱えている。この繰り返しが続いても、財政赤字が加速するだけだ(本連載第163回)。

 その状況下で、岸田首相が打ち出した新経済対策は的を射ているのか。“5本柱”から4項目をピックアップして、その中身を考察していきたい。

 まずは物価高への対応だ。岸田内閣は今後も、ガソリン代・電気代・都市ガス代などの負担軽減を重点的に行うという。補助金支給を年末まで実施することは既に決まっているが、年明け以降まで延長される可能性もありそうだ。

 確かにこの施策は、物価高に苦しむ国民を一息つかせるだろう。だが前述の通り、その効果は一時的なものだ。効果が切れたら「また次」の繰り返しになりかねない。

 これを防ぐには、物価高の本質的な解決が必要だ。

 しかし、9月22日の金融政策決定会合で、日本銀行は金融緩和策の現状維持を決めた。欧米の主要な中央銀行は、次々と金融引き締めに動いている。日銀だけが世界の潮流と真逆に見える。そのため、外国為替市場で円安が一段と進み、さらに物価高となる懸念がある、

 日銀が金融緩和をやめるのが難しいのは、金融緩和で延命させてきた製造業などが利上げに耐える体力がないからだろう。そして、利上げに耐え得る新しい産業が育っていないからだ。経済の構造改革の遅れで、日銀は身動きできなくなっているように思える。

 そうした本質的な解決が難しいのであれば、新経済対策における物価高への対応は「対症療法」の域を出ないだろう。