日本には、外国人を危険な場所で作業させたり、差別的な扱いをしたりする企業がいまだ多い。国連人権委員会の作業部会が、日本の人権問題に関するさまざまな勧告を行っているが、その中には「外国人労働者や移住労働者の労働条件」が含まれている。

 そのため、人権侵害を受けるリスクを冒してまで日本で働くのではなく、韓国や台湾へ行こうと考える東南アジア系の出稼ぎ労働者が増えている。

 要するに、低い賃金、劣悪な労働条件、人権侵害問題などで外国人に選ばれず、土木建設業の現場が疲弊しているのが日本の現実だ。岸田政権は国土強靭化に予算をつぎ込む前に、そうした状況を改善するべきではないだろうか。

「異次元の少子化対策」は
「子育て支援策」にすぎない

 最後に、“5本柱”に含まれる「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革」について少し触れておきたい。いわゆる少子化対策だ。

 この施策については、これまで打ち出してきた「異次元の少子化対策」を具体的に進める形になりそうだ(第323回)。

 異次元の少子化対策は、(1)児童手当を中心とする経済的支援強化、(2)幼児教育や保育サービスの支援拡充、(3)働き方改革の推進――の3点から構成される。

 だが、これらは「既に結婚して子どもがいる人たち」を支援の対象とし、未婚や子どもがいない人たちは対象外である。子どものいる家庭の生活をサポートする「子育て支援策」にすぎず、真の意味での少子化対策になっていない印象だ。

 真の少子化対策を進めるには、子どもがいない人たちが「産みたい」と思える社会を作る必要がある。繰り返しになるが、そのために必要なのは雇用慣行の是正だ。

 一昔前の日本では、妊娠・出産などによって一度離職した女性が幹部になるのは難しかった。日本における離職は、組織内における同世代の「出世争い」からの離脱を意味し、一度離れると二度と争いに復帰できなかった。

 ゆえに、かつての日本では結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い、パートなどの非正規雇用になっていくしかなかった。

 今は女性の社会進出が進み、表面上は日本企業でも産休・育休制度が普及した。一度現場を離れた女性(育休の場合は男性も)が、正社員として復帰できる体制が整ってきた。

 ところが、かつての名残なのか、産休などから復帰した人が周囲になじめなかったり、子どもの送り迎えなどで仕事を中抜けする人が白い目で見られたりといった「あしき風習」は今も企業に色濃く残っている。