2010年中期防衛計画で後方業務の合理化・効率化が決められ、民主党野田政権頃から自衛隊内で調理の業務委託が拡大した 。自衛隊の栄養士がメニューを決め、業務委託先の調理員がそれに従って調理をする。これまでの自衛隊内の自己完結した食事の提供がこの当時からできなくなった。土日の朝の食事が簡略化した菓子パン2個とジュースだけの拠点が増えたことも残念だ。
自衛隊と諸外国の糧食に対する認識は大きく異なる。自衛隊はコストを抑え、隊員たちが最低限の栄養補給ができることを目指している。しかし、諸外国は糧食を軍事力として捉え、日々の食事を充実させることで隊員の身体能力向上や増強を目指している。例えるなら、強靭な肉体を持ったアスリートを育成するための食事だ。この認識の違いが、隊員の体格差として如実に表れている。これでは身体能力向上など望むこともできないだろう。
SNSで筆者に対して次のようなコメントをいただいた。「会社員も他の公務員も自分でご飯を食べているんだ。自衛隊にぜいたくをさせる必要はない。食べられるだけでありがたいと思え」という内容だった。
糧食を軍事力として考えていない日本では、こうした考え方が主流派だ。しかし自衛隊や軍事組織の食事は、会社員や他の公務員のそれとは意味が変わってくる。自衛隊の食事の充実はぜいたくではない。この食事が、私たちの平和と安全な生活を守る防衛力となる。自衛隊員の食事について、我々国民はその意味を正しく認識する必要がある。
(国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表 小笠原理恵)