「あなたはダメだ」と繰り返し言われて育てば、失敗した時に「やっぱりダメだった」と落ち込みます。
「何をやってもダメだ」「私はダメ人間だから」という考えで頭の中がいっぱいになって身動きが取れなくなったり、「こんな思いをするくらいなら」と挑戦することをやめてしまったりすることもあります。
ここでお伝えしたいのは、「親がそんなことを言うからいけない」ということではありません。
自分がダメな人間だから「ダメだ」と自虐してしまうのではなく、Nさんのように、親に繰り返しそう言われ続けたせいで「ダメだ」と思ってしまうケースがあるということを知ってほしかったのです。
親なりに愛してくれていても、親なりに大切にしてくれていても、親にはそんなつもりがなかったとしても、親の一言があなたの人生に影響を与えることがあります。
ですが、人生に影響を与えるのは親だけではありません。
小さい頃は親の影響が強いですが、成長するにつれて社会全体の影響も強く受けるようになります。
例えばNさんの場合は、親に植え付けられたダメな自分像を自虐ネタとして使うようになっていました。
小学校の間はそれで笑いが取れたこともあり、人と仲良くなるために自虐ネタを使うようになっていったのです。
自虐発言を
減らしていくヒント
Nさんの場合は、自虐的発言歴は20年以上。芸能人でいえば、なかなかのキャリアです。
自虐が体に染み付いているような状態なので、「自虐ネタはもう一切やめよう」と決意するだけでは、なかなかやめられません。
やめられない自分が嫌になったり、落ち込んだりして、ますます自虐的になってしまうこともあります。
自虐歴が長い場合は、「自虐的な発言を減らそう」と思うことから始めましょう。
自虐的な言葉が出そうな時に、1回でも踏みとどまれたらそれでOK。
もし自虐的な発言をしてしまったとしても、「言った」ということに気づけたならOK。
自虐的な発言を減らす第1ステップは、気づくことだからです。
第2ステップは、実際に自虐的な発言を減らしていくことです。
「絶対に見るな」「絶対に押すな」と言われると、かえって気になってしまうように、人は禁止されたり命令されたりするのが苦手です。
だからこそ、自虐ネタを「言ってはいけない」と禁止するのではなく、「減らそう」と思ってみてください。意外かもしれませんが、そのほうが自虐ネタを言う回数は減らせます。
何より大切なのは、自虐ネタがなかなかやめられなくても、自分に厳しくしないこと。
なかなかやめられないのは、それほど過去の影響が強いから。
あなたのせいではないことで、自分を責めないでおきましょう。
自虐的な発言をしてしまう人は、自分に厳しい人が多いですから、「自分に厳しくなりすぎていないかな?」と時々振り返ることも忘れないでくださいね。
精神科クリニックに併設のカウンセリングルームで10年以上、心理カウンセラーとして勤務した後、独立。現在は人間関係、親子問題、機能不全家族専門カウンセラーとしてメールでのカウンセリングを中心に活動。メールでのカウンセリング、対面カウンセリングともにいつも予約がいっぱいで、現在も数か月待ちの超人気カウンセラー。
著書に『あなたはもう、自分のために生きていい』(ダイヤモンド社)などがある。最新刊は『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)。X(旧Twitter)@Poche77085714
※本稿は、Poche著『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)から抜粋し、再構成したものです。