岸田氏の言動は、自分が首相で居続けるために、米国と財務省に対して過剰なまでに融和的に最適化されている。それ以外に、独自の考えはない。
だから、岸田首相の演説は心がこもっていないように聞こえる。スピーチ原稿を読む代弁者の声にしか聞こえない。
率直に言って、岸田氏は「しゃべる空箱」のようだ。心から話しているように聞こえないので、表情にも注目がいかない。箱が音を発しているだけなので、「人間の顔」が国民には見えていない。「目力(めぢから)」などゼロだ。
言葉に力がないと、表情に注目する気にならず、やがて顔そのものが見えなくなって、メガネだけが残る。自然な論理ではないか。
つまり、メガネしか見えないので、岸田氏を「増税メガネ」と呼ぶことに多くの人が違和感を感じないのである。
「増税メガネ」を返上したいなら
対策は簡単だ
岸田氏が「増税メガネ」というあだ名を返上するための手段は簡単だ。
消費税を対象にするのが一番いいと思うが、例えば、「岸田の首相在任中は、消費税率を引き下げることはあり得ても、いかなる場合も引き上げることはあり得ない」と、一切の留保条件を付けずに言い切ってしまうことだ。
ここにきて、税収が予定よりも大幅に上振れしている。増税の必要性を演出するためにだろうと思われるが、財務省は税収を過小に推計していた。一方、普通に考えて、税収は名目GDPの伸び率と同等あるいはそれ以上に拡大するはずなのだ。しばしインフレが続くとするなら、財務省予算に対する現実の税収の上振れは半ば構造的だ。
財務省は上振れ分の「還元」を行うに当たって、一時的な給付金のような形でお茶を濁したいようだ。しかし、税収の上振れは一時的なものではなさそうだ。この際、還元を理由に消費税率を引き下げてしまうとどうだろうか。
それだけで、おそらく選挙では負けようがない。選挙で勝てば、政権は強化されるのが政治的なセオリーだ。首相でいたいだけが目的なら、合理的な手段になる。この目的のためなら、空箱に魂が入るかもしれない。スイッチオン。代弁でない、本当の言葉が出てくる。
財務省が本当に恐ろしいのかどうかは知らない。場合によっては、倒閣運動を仕掛けられることがあり得るのかもしれないが、そのときはそのときだ。国民が味方に付いている可能性もある。しかも、さらに景気が良くなって、税収がもっと上振れする可能性さえある。
この際、「この岸田の目の玉が黒いうちは、消費税の増税はさせない」というぐらい大げさなセリフを言ってみるのもいいかもしれない。政治的なレトリックとして許される範囲内だろう。
国民が、岸田氏のメガネの奥に、実は黒い「生きた」目の玉があったことに気づくようになるかもしれない。