「今まで通りにはいかない」
ファンに生まれた新たな視点とは

 ジャニーズ問題を受け、ファンの1人であるAさん(20代女性)は「苦境に立たされたタレントを応援していきたい気持ちが強まった」と話すが、Bさん(アラサー女性)は「今までのように100%純粋な気持ちで応援できなくなっているかもしれない」と話す。

「アイドルの世界はキラキラしていて日常を忘れさせてくれて、自担(自分の担当。推しメン)も現実離れした王子様的なところがよかった。しかしジャニーズ問題があってから、自担を見るときに『彼も渦中で大変だ。苦しんでいるに違いない』といった視点が混ざってくるようになった」(Bさん)

 このBさんの視点は、人間を見るものとしてはフェアで健康的だが、アイドルの推し活に「日常を忘れたい」要素を求めていたBさんにとっては、不純物となったようである。

「『彼の苦境だからこそ自分は応援して支えたい』という気持ちになったが、以前のように自担を『夢の世界に連れていってくれる存在』とは見なしにくくなってきているのも事実」(Bさん)

 AさんとBさんは葛藤を抱えつつも、共に自担を応援していく構えだが、中には自担への向き合い方がわからなくなり、意図的に一時距離を置くファンや、そのまま離れていってしまうファンもいるそうである。

 ジャニーズのファンであることをやめた人は、どこに向かっていくのか。「推し活」は専門家によっては「依存」と説明されることもあるくらいで、推しの対象であるアイドルは一種の依代で、推し活自体に生きがいを見出している人も中にはいるであろうことは、容易に想定される。

 元ジャニーズファンがあえてジャニーズを避けて、次なる応援の対象を探すとしたら、まず挙げられるのは別事務所のアイドル、地下アイドル、V系、ホストなどであろう。これらの界隈は一応それぞれが別ジャンルとして成立しているが、ホストにハマった女性について書かれた『ホス狂い』(大泉りか著)に指摘されているように、男性のルックスの方向性や集金システムが根本で似通っていて、クロスオーバーしている部分が多くあるから、どれか一つを知っていれば、お隣にお邪魔する際の心理的抵抗は比較的少ない。