上司の指示どおりにやったはずが、「そういうことじゃなくて」と怒られる。ならば小まめに確認しようと思うものの、上司は忙しくて声をかけにくい。
そんな職場のストレスを感じている人にぜひ読んでもらいたいのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、職場の「あるある」なお悩みを、木下氏に相談させてもらうことにした。「仕事が遅い」から「部下が動いてくれない」という悩みまで、その場しのぎの対策だけでなく、根本的な問題解決策を教えていただく。
連載2回目は、「指示通りにやったつもりなのに、上司に怒られる」というお悩みだ。(構成・川代紗生)

上司 部下 チェックPhoto: Adobe Stock

「仕事が遅い人」をすぐに動かす1つの言葉

──よく、若手社員向けの働き方のアドバイスとして「完璧を目指さず、完成度80%でもいいので上司に見せよう」があります。

 私もこのやり方を意識していたのですが、以前、「お前の80%は80%ですらない。もっと練ってからもってこい」と言われたことがありました。

 それ以来、「部下の思う80%は上司にとっては50%くらいなのでは? だとすると、自分では100%の完成度だと思うまで考えてから上司に出したほうがいいのかも?」と考えるようになりました。

 結局、上司にフィードバックをもらうべきベストなタイミングは、いつなのでしょうか?

木下勝寿(以下、木下):ご相談内容を拝見する限り、このケースでは上司に問題があると思います。

 人によって80%の感覚が異なるのは当たり前なので、それを確認しないまま丸投げするのは、管理職失格ですよね。

 たとえば私は、相手の理解度を、メモをとっているポイント・タイミングなどから、ある程度予測することが多いです。

「こちらが100理解してほしいものを、相手は10しか理解できていなさそうだな」と感じたときは、その時点で対策を打ちます。

 たとえば、指示をするときに、こう伝えるのです。

じゃあ、今すぐに着手して、1時間後に1回持ってきてもらえますか

「納期ギリギリでミス発覚」を防ぐポイント

──「パーセンテージ」ではなく「時間」で伝えるんですね。

木下:時間で」というのがポイントです。

「明日、また見せて」というのもダメです。

 1日あると、他のタスクと同時進行で進める場合もあります。

 となると、部下にどの程度の力量があるのか、正しく測れないのです。

 その点、「1時間後に持ってきて」という指示はとても有効です。

「1時間でできる量がこれくらいか」
「内容はここまで理解できているんだな」

 と把握したうえで、その人に合わせたガイドラインをつくれるからです。

 この人は、全部任せたらうまくまとめてくれるだろうなと思ったら、

「この調子で進めて」

 と伝えればいい。

 この人はかなり理解度が低いと感じたら、ミスが起きないように細かいガイドラインをつくる。あるいは、別の社員をサポートでつけるなど、いろいろ対策が練れます。

──任せっきりにしていたら、納期間近になって、全然思ったとおりの内容になっていなかった……などのミスも防げるわけですね。

 となると、私のケースの「もっと練ってからもってこい」という言葉の意図は何だったのでしょうか……。

木下:優秀な部下たちに甘えてきた結果、そんな発言になったのかな、という印象を受けました。正直言って、高学歴でハイスペックな人材が集まった、管理職と一般社員の能力差が大きくない組織でないと、成立しないマネジメント法だと思います。

 たとえば、一流企業の管理職の人と話をしていると、部下が全員優秀であることが前提のマネジメントをしていて驚いたことがありました。優秀な社員を揃えられているという点で、企業としては素晴らしいですが、管理職のマネジメント力は身につきにくい環境です。一流企業であれば成立するやり方でも、一般の中小企業などでは絶対に通用しません。

──トップ企業のマネジメント法をそのまま持ってきたからといって、うまくいくとは限らないわけですね。

木下:よっぽどの一流企業でない限り、優秀な人もいれば、そうでない人もいる。

 能力にバラつきがあって当たり前です。

 管理職にとって大事なのは、それぞれの社員のレベル感を正しく把握することです。

「デキる人」が指示を受けたら必ず聞くこと

──全員が優秀であることが前提でマネジメントする上司のもとで働く場合、どんなことを気をつければいいでしょう?

木下:指示をされた段階で、こう質問をしましょう。

このタスク、どのくらいの時間がかかるイメージでしょうか?

 こうやって、上司の求めるレベルを確認しておけるといいと思います。

私の見積もりではおそらく、5時間くらいかかると思うのですが」と自分のイメージも伝えた場合に、「いや、私(上司)は1時間くらいでできるものだと思っている」などと言われると、そもそも、仕事内容の認識ギャップが起きている可能性があります。

 そこで、

では、このあとすぐに着手してみますので、1時間後にいったん見てもらって、ズレているところがあれば、また指示していただいてもいいですか?

 と提案すれば、ほとんど完成してから「全部やり直せ!」とちゃぶ台返しされることもなく、スムーズに仕事が進められるでしょう。

──上司も、「〇〇さんが1時間後に来るって言ってたな」と、心の準備もできますもんね。

木下:確実なものをつくろうとしている姿勢が伝わりますし、「この人、優秀だな」という評価にもつながると思います。

 私が常に大事にしていることの一つに、「後でじっくり考えない法則」があります。

 これは『時間最短化、成果最大化の法則』でも触れたのですが、仕事が遅い人は不明な点があっても「後でじっくり考えればいいや」と上司や取引先とのすり合わせをあいまいなまま終わらせてしまう傾向があります。

 仕事が速い人は、打合せ段階で、認識の齟齬がないか、すべて明確になるまでその場で詰めます。だからこそ、上司に指示をもらった直後に実務に着手できるのです。

 おさらいしましょう。

・進捗確認のタイミングは「パーセンテージ」ではなく「時間」で決める
NGワードは「後でじっくり考えよう」

 これを意識できると、速く・質の高い仕事ができるようになると思います。

 上司とのコミュニケーションに悩むこともあるでしょうが、「できる人」の思考法を一旦インストールすれば、予防できるはずです。本書が、その一助となれれば幸いです。