ジャニーズと悪質ホストに共通する
「夢」と「性加害」

——もう一つの事件とは何でしょうか?

 連日のように取り上げられてきた、旧ジャニーズ事務所の創設者、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題です。#MeToo運動が広がりを見せるなど、その時々で性被害・性加害の問題は注目されてきました。しかし、企業が有名タレントとの契約を見直す動きが起きたこともあり、やはりこのジャニーズ問題は決定的な重みを持ったのだと考えています。

 悪質ホストは、女性に対して恋愛感情や結婚をエサにつけ入ります。そして「僕がナンバーワンになるのを手伝って欲しい」「将来、独立して店を持ちたいから支えて欲しい」とささやく。そして、高額な売掛を払わせるために、女性を風俗店勤務へと誘導するのです。女の子は惚れているうえに、マインドコントロール下にあるから、ホストの要求を飲んでしまいます。過剰なシフトで働くと体調を崩すようになるが、「僕たちの夢のために」とホストは休むことを許しません。

 また、きちんと避妊せず「枕営業」をするホストもいます。女性は妊娠してしまうが、「今は2人で夢に向かって頑張っている途中だから無理だけど、今度は産もう」などと言って、中絶させるようです。その中絶費用はあえてホストが払ったりするケースもあります。これは共通の後ろめたいことを作って共犯関係を形成し、女性が引けないようにするのです。

 ジャニー氏はアイドルになりたい男の子の夢を利用し、性加害を犯した。ホストは自分と一緒になりたい女の子の夢を利用し、同じく過剰な風俗勤務や中絶による性加害をもたらしている。夢を利用する点で同じ構造を持っているのです。

——何か対策はありますか?

 25歳以下の「青少年」に対してはホストが売掛ができないように「売掛禁止条例」を作るしかないでしょう。20代以下の普通の女性に、一晩で50万円や時に100万円以上ものツケを払わせるのは、どう考えてもおかしい。根本を止めさせなければいけません。

 2022年4月の民法改正で成人が18歳になりました。それまでは18歳・19歳だったら「未成年者取消権」が使えて、売掛も帳消しにできましたが、今はできません。むしろ、若年女性が標的となっているのが現状です。

 身分を隠したホストがSNSで、17歳の女性と接触。徐々に仲良くなっていき、18歳になったら「最初だからタダでいいよ」とお店に誘う。一度、来店させてしまえば、あとはホストの思うまま。恋愛経験も社会経験もほぼない若い女の子ならすぐに術中にはまってしまうでしょう。

 我々も手をこまねくだけでなく、こちらからも動かなければいけません。前例はあります。2000年に東京都がいわゆる「ぼったくり防止条例」を、2013年には新宿区が「客引き禁止条例」を制定しました。これらを参考にして各所に働きかけをしていきたい。