前田建設工業、前田道路などを傘下に収めて2021年に誕生したインフロニア・ホールディングス(HD)は、「脱請負」を掲げて業界再編を仕掛ける。特集『ゼネコン複合危機 全国2565社ランキング』の#7では、インフロニアHDの岐部一誠代表執行役社長のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
セカンドランナーという危機感
「脱請負」は土俵を変えて生き残るため
――中期経営計画では2030年度の売上高目標を1.2兆円としています。この目標を達成すれば、スーパーゼネコンの仲間入りとなります。
いわゆるゼネコンランキングで何位に入る、売上高1兆円を超えてスーパーゼネコンに仲間入りするという考えはありません。
われわれは、ただの建設業は目指していない。一般的に定義されている建設業のカテゴリーから脱したいと思っています。
――それが、いわゆる「脱請負」ということですね。なぜ、そこまで脱請負にこだわるのでしょうか。
弊社はスーパーゼネコンのように、業界の頂点にいるトップランナーではありません。セカンドランナーです。
米経営学者のクレイトン・クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』というベストセラーを書き、巨大企業が新興企業の前に競争力を失う理論を説きました。まさにトップランナーだと、改革したり、新しいことにチャレンジしたりするのが難しい。これは、企業の本質だと思います。
建設市場はバブル期には90兆円近くあったのが、今では60兆円程度。少子高齢化の日本において、マーケットは今後も縮小傾向です。われわれの方向性を市場の成り行きに任せるのは恐ろしい。強い危機感を持っています。
弊社がいろいろなことにチャレンジしなければいけない必要があったのは、まさにセカンドランナーだからです。土俵を変えなければ、生き残れない。
――脱請負を進めるべく、業界再編を掲げています。
インフロニア・ホールディングスが考える成長戦略には幾つかの打ち手があります。その一つがM&A(企業の合併・買収)です。
――具体的にはどんな企業がM&Aのターゲットになるのでしょうか。