そして業者は商品を受領する前に、売主に代金(「元本」に相当)を支払う。その後、業者は売主に買い取り契約をキャンセルさせた上で、1か月後の給料日を期限に高額なキャンセル料(「元本」+「利息」に相当)をキャンセル申出者(資金需要者)から回収する。先払い買い取り商法のスキームは審査や回収の知識という点で給与ファクタリングと本質的に同一であり、その派生形と捉えられる。
身近な中古商品がネットを介して売買される取引は一般化しつつあり、多様な商品の買い取り業者が社会に存在する。こうした状況下で、金銭交付を目的とした取引と実需を伴う取引を線引きすることは極めて難しい。しかしながら、2023年1月に全国で初めて茨城県警が先払い買い取り業者を摘発した。利用者(被害者)は1万2800人、貸し付け利益は約4億円にのぼる。警察の執念ともいえる捜査の結果であろう。そして、多くのヤミ金は「先払い買い取り商法」から、今回神奈川県警が逮捕した「ギフト券買い取り商法」へ転業していった。
しかし、これらの摘発で一件落着かというと、そう甘くはない。ここまで見てきたように、新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。
たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。
しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した。ただし、この裁判ではファクタリング業者による「回収リスクの負担」という観点で金融庁の見解に反駁の余地が残されている可能性を示唆した。
警察がヤミ金摘発に
本気になる本当の理由
そして、警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない三つ目の理由として、ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ。この点については改めて解説する。