当時、「ファクタリング業を偽装した新種のヤミ金」と批判されつつも、利息制限法を含めた法的適用性を巡る議論に余地が残されていた。このため、警察もその摘発に慎重にならざるを得なかった。いくら実態がヤミ金そのものだからといって、法的根拠なくして逮捕はできないからだ。
(写真提供:神奈川県警)
こうして野放しで成長していった給与ファクタリング問題が社会でもクローズアップされるようになった頃、ようやく重い腰を上げた金融庁は2020年3月にノンアクションレターを通して、このスキームが貸金業に当たるとの見解を示した。これにより、法的な根拠を得た警察は一斉に給与ファクタリング業者の摘発を進めたのだ。
警察が動き出したことに加えて、コロナショックが始まり、資金需要が大きく落ち込む局面でもあったことから、給与ファクタリング業者の多くは市場からの撤退を進めた。
しかしながら、経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。
筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた。
次々に誕生するヤミ金の新手口
警察がなかなか動けないのはなぜか?
後払い現金化のスキームを説明しよう。まずヤミ金が提供する無価値な商品やサービス(スマホで撮った風景写真、複写のアート画像など)を購入する申し込みを行う。ヤミ金は申込者(債務者)を与信判断した上で、無価値な商品やサービスを提供する。商品やサービスを受領した申込者は、口コミや評価点をネット上で記載することでヤミ金からキャッシュバックという名目で現金(「元本」に相当)を受け取る。
その後、申込者は次の給料日にヤミ金へ、購入した商品やサービスの代金(「元本」+「利息」に相当)を後払いするという仕組みである。
このように、さまざまに手口を変えながら拡大していくのが、ヤミ金の狡猾なところである。そして、この時も金融庁は法解釈の難しさから、後払い現金化商法が貸金業に相当するか否かの見解を示さなかった。その理由は後述する。