「私たちは外国の祭りを祝いたかったのではなく
ただ自分たちの思いを表現する機会が欲しかっただけ」

 もちろん、ネット上では「外国文化のお祭りを盲目的に崇拝するなんて、外国文化の侵略だ。みっともない。もっと中国伝統の祭日を大事にすべきだ」というネガティブな意見も散見される。これに対して、中国共産党系紙「環球時報」の元編集長で、中国最大のSNS「微博」に2400万人超のフォロワーを持つ胡錫進氏は、「上海のハロウィーンは、西洋の祝日による中国への侵略ではない。むしろ非常に“中国的”だ。ハロウィーンという外国のお祭りが、中国の若者の豊かな創造力によりこのように改造され、注目を集め、むしろ中国文化が強くなることにつながっている」と述べ、若者を擁護した。

 中国は昨年末にゼロコロナ政策を解除し、経済活動が再開されたが、今年に入ってからも、輸出の減少や不動産市場の落ち込みなどで経済は回復していない。若者の失業率の高さは年々深刻になっている。大学の新卒は「卒業=失業」と揶揄され、努力しても報われないと悲観的になる若者が多い。「寝そべり族」や「全職児女」といった用語が流行語となり、社会現象にもなった。「私たちは外国のお祭りを祝っているわけではなく、本当はただ自分たちの思いを表現する機会が欲しくて、ハロウィーンを利用しただけだ」という若者の声がSNSで共感を集め、何十万もの「いいね」が押された。

参考:中国の過酷な受験戦争を勝ち抜いた若者が「寝そべり族」になってしまう理由
中国でスタバに「おじさんが集結」する理由、日本の“失われた30年”に学べ?

 祭りが終わり、言いたいことを言えたし、楽しかった。だが明日になれば、その楽しかった夜は幻に感じるかもしれない。新しい一日が始まると、いつもの日常~続く残業、物価の高騰、仕事探しなど~に直面しなければならない。そして、来年のハロウィーンも今年のようにできるのかは誰にも分からない。これが中国の若者の現実なのだ。