スマホ時代になって、長い文章が嫌われるようになった。そこでコピーライティングの第一人者、神田昌典氏25年の集大成『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』の中から、メールの「開封率」と「クリック率」の技術を抜粋して紹介する。

スマホ メールPhoto: Adobe Stock

セールスメール3つの関門とは?

 セールスメールには3つの関門がある。

1つ目:開封=メールを開けてもらえるか?
2つ目:メールを読み進めてもらえるか?
3つ目:LPのリンクをクリックしてもらえるか?

 そもそも、メールがどれくらい開封されているか、クリックされているかがわからないと話にならない。まず、この点を確認しよう。

 メールがどの程度見られているかを定量的に把握する指標が「開封率」と「クリック率」だ。

 開封率は、メールの件名を見て、メールを開けた人(読んだとは限らない点に注意)の割合だ。開封率やクリック率を把握するためには「メルマガスタンド」と呼ばれるメール配信システムが必要だ。

開封率(%)=開封数÷送信数×100

 メールを1万通送信して、2000人が開封した場合、

 開封数2000÷送信数1万×100=20.0%。開封率は20.0%となる。

【誰も教えてくれなかった!】メールの「開封率」と「クリック率」の技術とは?

 また、メール内のリンクがクリックされた比率をクリック率といい、CTR(Click Through Rate)ともいう。

 クリック率は、メールにあるLPなど、別画面に誘導するリンク(URL)をクリックした人の比率だ。これには2つの見方がある。

1.送信数全体の中で、メール内のリンクをクリックした人の割合
クリック数÷送信数×100
2.メールを開封した人が、メール内のリンクをクリックした人の割合
クリック数÷開封者数×100

 下記がその例だ。

【誰も教えてくれなかった!】メールの「開封率」と「クリック率」の技術とは?

 一般的にクリック率といえば1.を指すが、2.の「クリック数/開封数」の比率を見ることで、次のようなことがわかる。

 リンクをクリックしたということは、メール内の文章に興味を持ち、もっと詳しく内容を知りたいと思ったということだ。

 「クリック数/開封数」の比率を見れば、メールの中身を読んだ人の中で、さらに詳しく知りたいと思った人の数がわかる。

 逆にいうと、開封はしたが、リンクをクリックしなかった場合は、面白そうだと思いメールを開封したが、その文章を読んで興味がないと判断したということだ。

 先ほどの例では、メールを1万通送信し、2000人が開封したが、リンクをクリックした人は200人だったということ。

 これを裏返せば、1万通送信したが、8000人は開封すらせず、開封した2000人のうち1800人はリンクをクリックしなかったのだ。

業種別平均開封率とは?

 開封率とクリック率の出し方はわかった。

 では、メールの開封率は一般的にどのくらいが目安なのか?

 本書392ページにデータがあるが、概ね20~30%が平均的なところだ。

 ただし、開封率を見る場合に注意すべきことが2点ある。

1.テキストメールは把握できない
2.率の分母となる全体数に左右される

 まず、1.開封率・クリック率は、デザインができるタイプのHTMLメール(本書380ページ)でしか取れない

 テキストメールの場合は、システム的に計測できないようになっているので要注意だ。

 次に2.だ。

 「開封率」「クリック率」は「率」なので、分母となる全体のリスト数に左右される。

 下の表のケース1は、あなたの大ファンである顧客を厳選して10名だけに送信したケース。

 ケース2は、保有する全リストに送信したケース。

 どちらが、「開封率がいい」か?

【誰も教えてくれなかった!】メールの「開封率」と「クリック率」の技術とは?

 「率」の絶対値だけ見れば、ケース1のほうがいい。

 しかし、大ファンに送っているのに、10人中3人しかメールが開封されない。これは問題だ。本来なら70~100%はほしいところだ。

 ケース2は開封数は1500だから、絶対数は圧倒的に多い。

 このように、分母が違えば、当然「率」は大きく変わってくる。

 一定期間、購入やメールの開封など、まったくレスポンスのない人を削除するなど、リストのメンテナンスを丁寧にやっていれば、リストの質は上がり、開封率は高くなる。

 一方、メンテの頻度が低く、レスポンスのない人を入れたまま新規客を増やしていけば、当然、リストの質は下がり、開封率は下がる。

 また、ロイヤリティの高い優良顧客の比率が高いリストを持っていれば、開封率は高くなる。

 一方、広告展開などで、ロイヤリティの低い新規客ばかりのリストでは、開封率が低くなるのは当然だ。

 先ほど「どちらが開封率がいい」か? と表現したのは、そのためだ。

 表面上の数字しか見ていないと、ケース1のほうが「いい」と判断してしまう。

 インターネットを使ったマーケティングでは様々な数値がデータでとらえられるが、その背景や前提を考慮しないと、判断を間違うことになるので注意が必要だ。

 これらを理解したうえで、開封率やクリック率の平均がどんなものか見ておこう。

2020年版「メールの平均開封率と平均クリック率」

 次は、アメリカのメール配信システム大手「ベンチマーク社」が発表した2020年版のメールの平均開封率と平均クリック率のデータだ。

 業種別と国別があるが、平均開封率は概ね20~30%

 平均クリック率は概ね2~3%だ。

 日本は開封率、クリック率ともに、他国よりも高い傾向にある。

【誰も教えてくれなかった!】メールの「開封率」と「クリック率」の技術とは?
【誰も教えてくれなかった!】メールの「開封率」と「クリック率」の技術とは?

 開封率は分母の前提が変われば、絶対値自体はすぐに変わるので、他社と比較するより、社内で継続的に数字を追いかけ、「過去と比べていいのか、悪いのか」を意識するほうが重要だ。

(本原稿は、神田昌典・衣田順一著『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』からの抜粋です)