DX(デジタルトランスフォーメーション)に続いてGX(グリーントランスフォーメーション)の波が来るとして、農学系学部の新設ラッシュが始まる。先にラッシュが起きた情報系学部がそうであるように、大学側はこちらでも文系学生を取り込もうとしている。特集『新・理系エリート』(全59回)の#5では、文系からシフトしやすい農学系の最新事情とともに、文系色の強い農業経済学・経営学系統16学科について10年間の偏差値推移を大公開する。(ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史、ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
農学は「文系からシフトしやすい」
東京農大の数学なし受験ルート
少子高齢化で経営難に陥る大学が増える中で、農学系学部・学科の新設ラッシュが始まる。
近い将来に訪れるだろう大学の大量閉校を前に、国が大学側に生き残る道として突き付けたのが人文系のリストラ、そして理系への転換だ。後者を加速させるため、理系学部を拡充する大学には資金支援する政策を打ち出した。
この支援制度で求めているのが、成長分野である「デジタル」と「グリーン」の2分野における人材の育成である。デジタル系については情報やデータサイエンスを冠した学部・学科の新設ラッシュが続いている。これに続く新たな波が脱炭素などに取り組むグリーン系で起きるのだ。
理系学部・学科への再編や定員増にかかる経費を助成する先として選ばれたのは、67大学。このうち3割は農学や環境などのグリーン系だ。具体的には立教大学の環境学部、中央大学の農業情報学部(農業生産科学科、生産環境工学科、食料ビジネス学科)、順天堂大学の食農学部(農業技術学科、食品科学科、食農マネジメント学科)などが新設される。
ここで肝心なのは受験生もこの動きに付いてくるか、である。日本では、理系を専攻する学生の割合が他の主要国に比べて総じて低い。そのため、文系組の学生を理系にシフトさせることが必要になる。
そこに手を打ったのが東京農業大学。23学科のうち11学科については、文系3科目で受験できるようになった。「文系からシフトしやすいのが農学」と副学長である千葉晋教授はいう。
次ページでは、東京農業大の「数学なし入学ルート」の詳細と、文系色の強い農業経済学・経営学系統16学科について10年間の偏差値推移を大公開する。