「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の最新刊「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。
新しい言葉に出会うための方法
前回の連載で、「語彙力」を高めるには、①新しい言葉に出会う②知らない言葉を調べる③脳に定着させて覚える の3要素が必要だとお話しました。
今回は「①新しい言葉に出会う」ためのとっておきの方法をご紹介します。
それが「会話をする」こと。意外に見落とされがちですが、実は非常に効果的な方法です。
コロナ禍を境に、在宅ワークやオンラインミーティングを取り入れる企業が一気に増えました。オンラインでやりとりする場合は、なるべく余計なことはしゃべらないほうがいいという空気感があるので、ちょっとしたことを話す機会がありません。
人との会話が減るということは、新しい言葉に出会うチャンスも減るということです。
尊敬できる人と話をしていて、「素敵な言葉を使う方だな。ちょっと真似してみよう」と、自分の言葉に取り入れたことのある人もいるのではないでしょうか。でも会話の総量が減れば、新たに出会う言葉の量は減少してしまいます。
意識しないと言葉はどんどん失われていく
もしかすると「スマホで外の世界に触れているし、SNSで会話もしているから大丈夫」と思う人もいるかもしれません。
しかし、その言葉は「ヤバイ」だったり、「草(ネット用語で「笑う」の意味)」だったり、簡略化されたものが多いのでは? 中には、絵文字やスタンプのやり取りだけで終えるケースもあります。
SNS上の大半を占める、素人が書いた文章を読むだけだと、どうしても自分の枠を超えた言葉に出会うことは難しいものです。
私たちは、意識しないとどんどん言葉を失っていく環境に置かれているという現実を、まずは自覚する必要があります。
新鮮な人との会話は、飛び交う言葉も新鮮
言葉に出会う機会が減っている今こそ、新鮮な言葉のシャワーを浴びるために、積極的に会話をしましょう。
オンラインでも構いませんが、できれば会って会話をするのがおすすめです。対面での会話はオンラインに比べて内容が濃くなりやすいので、新しい言葉に出会える可能性が上がります。
勉強会やセミナーなど、人に出会える場所へ足を運ぶのもおすすめです。ふだん関わっている人とは違う領域の人との会話は刺激的で、新たな言葉(学びを含む)の獲得も頻繁に起きます。
「伝わる」「伝わらない」の練習にもなる
また、会話することは語彙力アップを促すだけではなく、言語化力を高めることにも直接的につながります。
雑談や会話は、意外と奥が深く難しいもの。会議のような、話す目的がある場所では言語化が得意な人でも、特に目的がない雑談は苦手という人も少なくありません。
雑談や会話は、相手の言葉や言外のしぐさを見ながらこちらの出方を臨機応変に変えなければ盛り上がりません。
相手の反応がその場でわかるので「あれ、今の言葉じゃ伝わらなかったのか」「今の言い方が誤解を招いたのかな?」、「じゃあ、こういう言い方にしてみよう」というトレーニングが即座にできるのです。様々な人との雑談や会話は、言語化力アップにてきめんの効果をもたらす実践道場なのです。
*本記事は、山口拓朗著「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」から、抜粋・編集してまとめたものです。