だが通常、創価大で学んだことのない学会員が池田氏に手紙を出しても、この定型文の返事すら滅多に来ないと聞く。その点でも、学会員としては“創大卒”は恵まれているということになる。
こうした手紙のやり取りは、2000年頃から2012年頃まで行っていたが、2008年頃に一度だけ、女性ではなく男性から電話がかかってきたことがある。いつもとは違い、「池田先生からのご伝言」は伝えられず、「創価学会本部の何とか部長」と名乗る電話の主が、次のように話してきた。
「あなたのお手紙、そしてご活躍を、池田先生はとても喜ばれております。それで直接、あなたに激励するようにとのことで。つきましては、都合のいい日時を教えていただきたい。どこにでも行きますよ」
創立者への手紙を書き続けて
生まれた、奇妙なシンパシー
こうして、学会青年部の幹部という学会本部職員と会うことになった。
「申し訳ないけれど、私、学会はあまり好きではありません。ただ創価大を卒業しただけという位置づけです。その立場で、学会のいいところも悪いところも書いていきますよ」
すると、「現代の背広を着た僧侶」と呼ばれるこの学会本部職員は、信仰者らしい温和な表情を崩さず、こう返してきた。
「そういうあなただからこそ、池田先生は応援されているのですよ。それでまず、これをお受け取りください。池田先生からのご激励です」
池田氏と数学者・ヴィクトル・A・サドーヴニチィが書いた『新しき人類を 新しき世界を』(潮出版社)という書籍だった。後で学会本部に関係する人から聞いたが、池田氏から「直接手渡しで」と職員に託された激励品は、できるだけ激励する人物に合わせた品が選ばれるという。確かに、数学者が共著者ということもあり、宗教嫌いの私にとっても受け取りやすかった。
人は攻撃されると反撃したくなるが、あまり好ましくない人物や、団体のトップから好意を示されると、反撃しにくいものだ。場合によっては、ファンになってしまうこともある――。人はこれを「取り込まれる」という。