2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

「インボイスに登録してください!」と言われたとき、絶対交渉すべきポイントPhoto: Adobe Stock

「インボイスに登録してください」と言われたら?

 インボイス登録を一律でお願いすることは、法律上禁じられています。公正取引委員会からの指摘があり、すでにホームページ上でも公表されていますので、確認してみましょう。

 しかしながら、実際にそのようなお願いがあった場合、どうすればいいのでしょうか。「法律違反」という話をすると、角が立ちます。

 まず確認したいのは、インボイスに登録しない場合にどうなるかです。取引停止ということが考えられるなら、その判断は慎重にしたいものです(これも法律違反ではありますが)。

値下げを提示されたら?

 インボイスへ登録しない場合、もし2%程度の値下げを提示されたとします。その損得を計算してみましょう。

 まずインボイスに登録した場合、下記の手間が増えます。

・経理上の消費税処理
・消費税の確定申告

 2期前の売上高が1000万円以下であれば、消費税は、「売上の消費税の20%(原則として売上の2%)」となり(2026年9月30日の属する期まで)、経理も確定申告も楽になる特例はありますが、手間は確実に増えます。

 こうした手間を踏まえると、2%程度の値下げのほうがトータルの損は少ない可能性もあるでしょう。もう少し具体的に見ていきましょう。