「考える力」は、勉強だけでなく人生において大事であることは誰もが頷くところだろう。とくに変化のスピードが速く、先が見えない時代においてはなおさらだ。では、その「考える力」はどうやって身につけたらいいのだろうか。首都圏の有名中学に合格者を多く出している進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、基礎的な知識を有機的につなげる力が必要だと語っている。この記事では、富永氏の著書『男の子の学力の伸ばし方』から、「考える力」を身につけるために必要なことと家庭でできる方法について紹介する。(構成:小川晶子)

男の子の学力の伸ばし方Photo: Adobe Stock

考える力は知識量に比例する

 2020年度に学習指導要領が改訂され、学校教育も「考える力」重視へと変化してきている。

 大学入試でいえば、それまで知識を問う問題が中心だった「センター試験」に代わり、思考力・判断力・表現力重視の「大学入学共通テスト」が2021年度から導入されている。

 これに伴って、小中高で学ぶ内容も変化しているわけだ。

 時代は「知識の詰め込み」ではなく「考える力」重視へ……。

 我が子には考える力をつけてほしいと願うお父さんお母さんは多いだろう。筆者もその一人である。

 では、考える力をつけるにはどうしたらいいのか。

 中学受験の首都圏トップクラスの合格率を誇る進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、「考える力は知識量に比例する」ことを強調している。

考える力は基礎的な知識の蓄積があって生まれるものです。漢字がわからない子どもが、難しい書籍を読むことも、立派な論文を書くことも不可能なように、基礎的な知識が蓄積されていない子どもが「考える力」を磨くことなどできません。(P.107)

 知識がなくても自分の頭で考えることができれば、あらゆる問題を解決できるのではないか……というのは幻想であるようだ。

 基礎的な知識がないということは、考える材料がないということ。何も知らないのに突然素晴らしいアイデアがひらめくはずもないのだ。

 富永氏は「そもそもそれを知らなければいくら考えても解けない問題を解く力」を「絶対的基礎力」と呼び、最重視しているという。

絶対的基礎力の重要性は、当たり前すぎて逆に見落とされています。それどころか、「考える力こそ重要だ」という最近の風潮によって否定される傾向にあります。(P.39)

 中学入試で出される問題は基礎だけでは解けない問題が多いが、それは「基礎がなくても解ける」ということではない。

基礎だけで解けない問題はどうやって解いていくのでしょうか。多くの親は「そのためには応用力が必要だ」と考えるのですが、実は基礎をつなげることで解いていくのです。それが「わかる」ということです。(P.78)

 基礎的な知識が増えるということは、「点が増える」ということであり、点同士が有機的につながることが「わかる」ことである。

 そして、「考える力は『つなげる力』である」と説明している。

家庭でできる、「考える力」をつける方法

 本書では、基礎学習で学んだ「点」を有機的につなげて、「わかる」状態に持っていくために家庭でできる方法を解説している。

A3くらいの大きな紙に、たくさんの点の要素を書いておき、それを子どもにつなげてもらうのです。そのときに、 「どうしてつながったのか」「そこでどういうことが起きているのか」 といったことを子どもたちの言葉で説明させます。
どんな点の要素を書いておくかについては、まったくアトランダムでかまいません。新聞や雑誌、子どもの教科書、地図帳などから選んでみましょう。(p.80)

 または、真ん中に要素の一つを書いておき、マインドマップのように点をつないで伸ばしていく方法でもよい。

 たとえば、紙の中央に「イスラエル」と書く。そしてその周りに「ユダヤ教」「パレスチナ」「中東戦争」など、関連するワードを書いていく。その周りにさらに関連するワードを書いていき、それぞれ関連があるもの同士を線でつなげるといった感じだ。

 「考える力」は、身に付けさせたいと思っても、具体的にどうすればいいのか悩む人は多いと思う。この方法ならすぐに実践できるし、なにより楽しくできそうだ。

 そのほか、本書では男の子の脳の特徴に合わせながら「考える力」を育てる方法が紹介されている。中学受験に関心のある人のみならず、我が子に「考える力」を身に付けさせたいと願うお父さんお母さんにとって、おおいに参考になるだろう。