アメリカで異次元成長を果たしているSaaS企業が多く現れたことは、ポジティブなインパクトを与えたと言えるでしょう。ARR約1.4億円からARR約140億円を20カ月で果たしたDeelや、それよりもさらに2カ月短い期間で同じ結果を達成したWiz。上場企業でもSnowflakeやDataDogなどがARR1000億円を超えている中で、引き続き高い成長率の達成を実現しています。
これは、SaaSやクラウド需要が継続して高いということ、そして営業やプロダクト戦略が業界全体でますます洗練されている証明だと思っています。日本でも、非常にクオリティーの高いSaaSスタートアップがまだまだ生まれており、SaaS業界は一時の流行ではなく、まだまだ伸び盛りの状況にあると考えています。
2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
2022年のSaaS業界の注目のキーワードは「セカンドアクト」です。
SaaS事業の多くは、1つのプロダクトのサブスクリプションモデルからまずは参入するのですが、ある程度の売上規模になるとプロダクトやビジネスモデルなどを複数展開して事業ポテンシャルのさらなる拡大を狙います。このセカンドアクトを「どのタイミングで狙うべきなのか」がまさにホットな話題になった、注目された1年だったのではないでしょうか。
例えば北米では、Salesforceがアプリのエコシステムを創ったり、ServiceTitanがマルチセグメントの戦略を展開したり、ToastがFinTechソリューションを展開したりとさまざまな事例が誕生しています。
日本でも、アンドパッドがシリーズDラウンドの資金調達を発表した際、セカンドアクト「ANDPAD Second Act」を大々的に発表していたことが印象的でした。振り返れば、Sansan、LayerX、SmartHRもそれぞれの事業やプロダクトに合ったセカンドアクトに挑戦していることはお気づきの方も多いのではないかと思います。
2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。
短期的な評価額はさておき、需要、ビジネスモデルの強さ、そして業界全体のレベルの底上げにより、引き続きSaaSへの投資は積極的ですし、業界への投資も続くと思います。
特にAIの波は「再び訪れた」と言えるのではないでしょうか。OpenAIが発表した「ChatGPT」は、AIへのポテンシャルを改めて示す大きなインパクトがありました。AIを活用した利用シーンやビジネス機会は、増加傾向にあります。Generative AIを活用したVertical SaaSやVertical AIは、僕自身も今後注目する分野ですし、ますます盛り上がりを見せると思います。