またSDGsへの対応に伴って、環境負荷の低い代替品市場が広がる一方、2030年ごろからは現在の畜産業は縮小していくとの予測が出ている。

世界の食肉消費量 2040年までに従来の食肉供給量は33%以上減少
 

「先進国では、2040年には細胞培養肉や植物由来代替肉への置き換えが進んで、日本から畜産業がなくなる恐れもあります」(神林氏)

最近、第一次産業である農業や水産業の領域においては、データドリブンな生産プラットフォームを立ち上げ、実用化する動きが進んでいる。都市の空きスペースに野菜工場を設ける試みもあり、またAI・IoT技術の活用が農業だけでなく水産養殖プラットフォームにも広がっているといった話は耳にするようになったが、畜産業ではどうか。

「世界40兆円の市場を持つ養豚産業ですが、養豚場に行っても、データを活用した生産プラットフォームはありません」(神林氏)

そこでEco-Porkは2017年の創業当初から、ICTとAI、IoTを活用し、データを集め、どう豚を育てるのが最適かを分析して、自動給餌や給水、温湿度管理を行うことで、生産量の50%アップ、エサの30%減を目標とした「養豚DX」を目指してきた。

「原価割れ」の豚をなくす──AIブタカメラで豚の体重を把握

「養豚というのは、1キログラムで生まれた豚を、半年で120キログラムにまでボディビルドする生産業です。ただ普通に育てていては最適には育ちません。ライザップでトレーナーを付けるのと同じように、豚の状況や飼育環境を監視・制御し、給餌や給水、環境の整備を自動化しようということが、我々が今やっていることです」(神林氏)

Eco-Porkではまず、2018年に養豚経営・生産管理クラウドの「Porker」をリリース。2020年にはIoTで豚舎の環境を遠隔測定、モニタリング可能なシステムの提供を開始した。そして2021年に、3Dカメラで豚をとらえて自動測定し、AIによって状態を把握するロボット「ABC(AI Buta Camera)」をプロダクトのラインアップに加えた。

ABCは豚舎の天井のレールに設置すると、豚舎の中を端から端まで自動的に移動して撮像。豚を3D測定することによって、個体ごとに全身960カ所の特徴量を取得する。また豚の姿勢や行動も検出できるため、カメラに映らない部分の情報も推定して復元。豚がどのような姿勢でどのような行動をしていても、また豚同士が重なっていても、豚の体重や心拍などのバイオロジカルデータを複数頭分、一括して取得することが可能だ。

ABCによる体重測定イメージ
ABCによる体重測定イメージ 画像提供:Eco-Pork

ABCで取得したデータはPorkerと連動しており、豚の成長状況や出荷日の予測、計画に対する成長の度合いなどを自動集計する。これにより、以前は生育状況が把握できないとされていた豚の状態を把握することができるようになった。