下村:創業当初は本当に苦労しました。農家の方々にまず遠隔で農作業する概念がないので、「農家の仕事を奪うのか!」なんて反応をいただいたこともありました。そこからどのように進めていったかというと、フェイガーさんのように、やはり仲間づくりからです。一緒に新しい挑戦をしてくれる農家の方にまずは使っていただき、改善ポイントを教えていただきながら、製品をブラッシュアップしていきました。農家の方々とともに完成させたんです。当初は高齢の方には使いづらいのではないかと懸念していましたが、今は当たり前のように使用してもらっています。ようやく出荷数は1000台突破したところ。これからさらに広げていく段階です。
脱炭素化に農業×スタートアップができること
――農業からカーボンニュートラルの実現へ。その時、スタートアップにできることはなんでしょうか。
秦:農業界の既存の商流などに影響を受けないところで、唯一動けるのがスタートアップではないかと思っています。国内を見るとJAという巨大な組織がありますが、やはり協同組合なだけに、マスの部分に対するアプローチになりがちです。行政もまた、地域の生産者のための動きが中心となる。そうすると、何か尖ったことやリスクのある取り組みを進められる組織は、スタートアップしかありません。農業界で未知でもあるカーボンニュートラルに対し、クイックに動くことこそ、我々の役割でしょう。
石崎:我々スタートアップは良くも悪くも枠組みの外の存在なので、海外の良い取り組みなどを無邪気に提案できる。そんな強みがあります。私自身は長らくシンガポールで働いていましたし、ほかのメンバーもベトナムやタイで働いていました。ある意味、日本の当たり前を知らないメンバーばかりだからこそ、日本の農業を変えていけると期待しています。外から持ち込むのは、スタートアップだからこそできることですね。
下村:水田、そして我々の事業である水管理は、メタンガスの抑制に直結しています。水田の水管理をコントロールすることで、メタンガスを抑制させることができるのです。国内はもとより、海外でも展開できれば、メタンガスの削減に大きくつなげていけるでしょうし、これをフェイガーさんのサービスとコラボレーションできれば、カーボンニュートラルへの貢献に加えて、新しい農業の収入源になるかもしれません。
秦:一方で、農業の全プロセスをスタートアップ1社で完結することは非常に難しいですよね。農業界のファーストペンギンになるような方と接点を持って、その方々とともに地域の理解を得ながら、取り組みの重要性に対してコンセンサスを得ていくためには、行政など周辺のプレーヤーからの働きかけも重要になると思います。