石崎:その通りですよね。お二方と違って我々は農場を自分たちで持っていないので、農家の方があくまで主役です。光を当てる対象がないと我々には存在価値はありません。そうした点でいうと、農業界の大きなプレーヤーが共同してくれることは絶対に外せません。
下村:皆さんもおっしゃる通り、業界変革はとても1社でできることではありません。スタートアップの魅力としては、そこで誰と組んでいくのかを柔軟な判断で選べること。特に農業は、既存プレーヤーだけでは変革できないと思います。違う業種、違う会社が入ってきてイノベーションを起こし、既存プレーヤーの発想を変えていかないと、産業変革まではいかないでしょう。
農業から進めるカーボンニュートラルへのアプローチ
――農業界の持続可能な変革に期待しています。最後に、今後の展望を教えてください。
秦:まずは、自社ロボットを使って最適化したビニールハウスでの栽培を進めます。今年から来年にかけて、きちんと収支をプラスにして、持続可能な状態にしていこうと考えています。ここでベースをつくることができれば、例えばビニールハウスの電源に太陽光発電を使う、バイオマスのボイラーを使うなど、カーボンニュートラルへの取り組みも加えていきたいですね。我々の一番の強みは、やはり生産プロセスを自動化できるロボティクスの技術です。それ以外の部分は、スタートアップを含めて農業界にいるたくさんのプレーヤーと連携しながら推進したいと思います。
石崎:日本で仕組みを整えたら、すぐに東南アジアへと展開したいと思っています。日本に閉じない仕組みがあることは、日本の先進的な農家の取り組みが海外で評価されることにもつながります。カーボンニュートラルは、世界全体で取り組んでいくものです。こうした大きなテーマだからこそ、大きな貢献をした人には大きな還元が生まれる世界にしていきたい。日本の農業界には、カーボンニュートラルに対してしっかりと貢献している方がたくさんいます。これをきちんと評価できるようにし、海外を含めて、我々の仕組みをいち早く広げていきたいです。
下村:我々も海外への展開を目指しています。国内で集まったデータを東南アジアなどに持っていき、そこでさらにデータを収集していく。ゆくゆくは、国内の市町村と共同し、水管理は当社ですべて制御している町を作る。そんな取り組みを実現したいですね。また、世界では水が枯渇傾向にあるので、いかにコントロールして少ない水で栽培するかというスマート農業に興味を抱いています。水資源の大切さへの関心も高く、まさに我々の貢献できる部分です。農業界で人が減っていくのは止められません。少ない農業法人、少ない農家になったとき、どのように農業をやっていくのか。これからの時代のために今、その準備をしておかなければならないのです。