世界初のFPA降下実機実証から見えた燃料削減効果
——世界初となるFPA降下を実機実証されるまでの過程と、今回の成果を教えてください。
田中:2022年12月に世界初となるFPA降下の実機実証を行いました。ですがここに至るまでの道のりは長いものでした。
まずは、FPA降下を実施するにあたって現状どのような課題があるのかをパイロットの方にヒアリングし、同時に、実際のデータを検証して、過去に起きた事象を「見える化」するところから始めました。ベースラインをはっきりさせることに、時間を使いましたね。そうして課題が明確になったところで、フライトシミュレーターのテストを実施しました。伊藤先生が過去に研究していたので、ある程度結果は予測できていたものの、今回Peachが運航するエアバス機で本当に運用できるのか、特に燃料削減効果についてどれくらいのインパクトが期待できるのかを、いろんな条件で試していきました。
伊藤:今回、対象とした関西国際空港に到着する飛行経路上で、CDOは、通常飛行と比較して1フライトあたり最大で約200ポンド(約100kg)の燃料消費を抑えられます。実証実験の結果、FPA降下でも最大でそれに近い燃料消費の削減効果があることが見込めたのです。科学的な手法での予測が、実証で得られた結果にそのまま当てはまっていたところは、非常に良かったですね。
今回の実証で用いた降下手法は、データサイエンスと数理モデルとシミュレーションを組み合わせ、学術的な体系のもとに最適な経路や燃料予測を行い、AIやマシンラーニングを使って導いています。関西国際空港では現在、23時から7時までCDOが利用できますが、今回の実証を行ったのはこの時間より少し混雑している22時台の便。17日間において、17便中の15便で実施することができました。
舩井:今回の実証実験には2つの大きな意義がありました。1つはCDOが利用できない時間帯であっても燃料消費の削減に成功したということ。もう1つは、最も燃料を減らせる降下手法とされてきたCDOと同程度の燃料削減効果があったことです。予想以上の効果が得られたため、実務として航空機を運用している会社の立場からしても驚きました。
伊藤:フライトシミュレーターは実機を模擬していますが、実際の運用下でできるのかはやってみないと分かりません。実証実験では、高い実施率で、かつ期待した通りの燃料削減率が確認できたので、本当によかった。パイロットの方々からも「今の機材や運用の中でFPA降下を十分に実施できます」というコメントをいただけて、満足できる結果でした。