月額プランでは、音声の倍速再生やリピート再生といった“有能なMP3プレーヤー”のような機能と、音声をダウンロードしてオフライン再生できる機能などを搭載。これを月額240円の定額制アプリとして提供した。

今でこそサブスクリプションモデルのアプリも珍しくなくなったが、当時の英語教育系アプリは買い切り型が中心。幾嶋氏たちにとってもサブスク型の課金は大きな挑戦だった。「これらの機能によってどれほどのベネフィットが見込めるか。安く見積もっても時給換算にすれば1000円くらいの価値はありそうだけれど、いきなり1000円はハードルが高いかもしれない」と悩んだ末に価格を決定したという。

その翌月からは、アプリ上で教材を購入し、さまざまな機能を用いて学習できる仕組みを導入した。

「マネタイズという意味では、このタイミングが1つの転換点になりました。当時は投資家の方々と話をすると、『エドテックは儲からない』と言われることが多かったんです。ダウンロード数が増えていても、実際にマネタイズできるのか。その問いに対して何も言えない状態でした。一方で『これであれば売れるのではないか』というものを自分たちなりに考えて、ずっとブラッシュアップを重ねていました。その最初の教材が、しっかりと売れたことがものすごく大きかったです」(幾嶋氏)

リリース初日、App Storeの教育アプリにおけるセールスランキングではいきなり10位にランクイン。1カ月で100万円以上を売り上げた。「たった1冊の教材だけでもこれだけの成果が出たのであれば、もっといけるかもしれない」。チームの中での自信にもつながった。

実際、複数の出版社に打診をしていていたが、必ずしも反応が良いわけではなかったという。「最初の1冊で実績が作れていなければ、おそらく次のライセンスは取れていなかった」と幾嶋氏が話すように、Globeeの事業拡大においても1つのターニングポイントになった。

AIを用いた“超パーソナライズ教材”の実現で躍進

コンテンツが拡充され、学習データが蓄積されていけば、幾嶋氏が当初から思い描いていた「良質な教材のデータベースの中から、その人に合った問題がレコメンドされる」という“AI英語教材”の世界観にも近づく。

abceedでは2018年の8月に教材が使い放題となるUnlimitedプラン(現在はPremiumプラント統合しProプランとして提供)を、そして同年12月には本丸のAI機能の提供を始めた。もっとも、ここに至るまでにも大きな「ライセンスのハードル」があったという。