商品数やオプション数の拡大と並行して、今年1月にはiOSアプリをローンチ。地方でテレビCMを放映するなど、プロモーション施策も進めた。売り上げは非公開であるものの、2020年6月時点において前年同月対比で売上成長率約310%を達成。7月時点で1回あたりの平均決済単価は約7000円となっていて、こちらも昨年同月の約6000円から上がっている。

直近では新型コロナウイルスの感染対策として百貨店が営業を休止したことなども影響して、オンライン上でギフト販売を手がけたいブランドからの問い合わせも増えたという。

強みは地道に開発を続けるギフトロジ

表からは見えづらいものの、TANPの成長を根幹で支えているのが、地道に開発を続けてきたギフトロジだ。

近年は倉庫管理システム(WMS)やオペレーションを効率化する物流システムなどが充実してきているので、それら外部開発のシステムを活用してサービスを運営するEC事業者も多い。

一方でGraciaでは倉庫を自社で設け、在庫管理や発送管理、顧客管理などに関する各システムもフルスクラッチで開発している。一見遠回りにも思えるが、複雑なオペレーションを社内で管理できる仕組みを持っているからこそ細かいニーズにも応えられる。

「既存サービスの利用や3PL(サードパーティーロジスティクス:第三者のロジ会社)に委託することなども考えましたが、『ギフトECにおいて1番良い顧客体験を実現すること』を考えた結果、自社で作った方が長期的に質を担保しながらスケールできるという結論になりました。在庫登録から仕入れ、入庫、梱包、発送という一連のオペレーションの中で一部だけ他のツールを取り入れても、その工程が結局浮いてしまいます。上流から下流までサプライチェーン全体を一気通貫でコントロールすることができれば、それが大きな強みにもなります」

「実際にこれまでサービスを運営してきた中で物流こそがサービス価値の向上に繋がると同時に、成長のネックにもなると感じました。過去には繁忙期で需要が高まっているものの、物流面が追いついていないことで機会損失が発生したこともありました。(スタートアップにおいて)『自分たちでやらなくても良いことはやらない』という判断は大事ですが、僕たちにとって物流は自社の競合優位性の源泉でもあり、それを自らやらないと結果的に誰でも作れるサービスに落ち着いてしまうのではと考えています」(斎藤氏)

昨年8月の資金調達以降も物流部門の体制整備やシステムのアップデートを継続的に実施してきた。その成果もあり、1日あたりの最大発送可能件数は2300件を超えるほどに拡大。昨年8月時点では1200件という話だったので、約2倍まで広がった計算だ。