製造業のプロセスと先端技術をデザイン業界へ導入
ロゴAI開発において、職人の思考プロセスの可視化を可能にしたのは、中平氏をはじめとするガラパゴスの創業メンバーが、いずれもコンサルティングファームで製造業のプロセス改善に携わっていたからだという。
「金型製造現場にコンサルタントとして入り、職人の頭の中を解明していました。製造業の金型の現場はノウハウの固まり。職人のおじさんにしかできないことが何十個とあるわけです。その判断と作業を全て可視化する技術がプロセステクノロジー。作業であればオートメーション化できるし、判断であればデータベース化することによって、誰でもできる状態にして属人性を下げ、工程が短縮されます。それで工場の生産性を上げるということをやっていました」(中平氏)
このプロセステクノロジーと、ディープラーニングやAIといった技術を掛け合わせ、製造業のプロセスと最先端の技術をデザイン産業に持ち込むことで「デザイン業界における産業革命を起こす」と中平氏は語る。
現在、ガラパゴスのプロダクトの対象は、ロゴからランディングページ(LP)などのデザインへ移っている。
「何年かやってみて分かったのですが、ロゴのマーケットは小さく、単価も安い割には非常に手間がかかります。何がいいロゴかを説明する目的変数がないので、クライアントから『もうちょっとこうしてほしい』『ああしてほしい』と言われると、答えがないから永遠に修正するケースもあります」と中平氏は“ピボット”の背景について説明する。
「ロゴはブランドであり、どちらかと言えばアートの領域に近い。デザインを科学するなら、目的変数がはっきりした『パフォーマンスのデザイン』領域へ進出した方がいい。そこで、広告デザインの領域でプロダクトを展開することにしました」(中平氏)
広告デザインの現場もアナログではあるが、データは豊富だ。CPA(Cost Per Acquisition:案件獲得単価)、CTR(Click Through Rate:クリック率)、CVR(Conversion Rate:購買・登録などの成果達成率)といった数字がクリエイティブとひも付いているので、「より科学しやすい」と中平氏は言う。
またマーケットサイズも、人件費換算で国内5000億円、世界規模では8兆円と大きく、現状では競合はほとんどいないと中平氏はいう。
2019年9月に本格的にリリースされたAIR Design for LPは、広告主や広告代理店の課題を解決しようと生まれたプロダクトだ。インターネット広告から誘導された先でプロダクトやサービスを紹介し、ユーザーの購買や登録などの行動に結び付けるためのLPを、AIで生成。クリエイターが最終調整をしてクオリティを向上させつつ、高速・大量にLPを提供することを可能にしている。