「スマートフォンがあまりにも革命的で、これはちょっとしたトレンドではなく確実に世の中をガラッと変えると感じました。同時に現地で実名制SNSのFacebookが急速に広がっていく瞬間を目の当たりにして。この2つの変化を実際に肌で感じることができたのが非常に大きかったです。あらゆる領域が“ガラガラポン”の状態になるというか、新しいプレイヤーが現れて全く新しい価値が生まれる余地があるはずだと」(武田氏)

今は何をやるにしても最高のタイミングだ──。武田氏はそれ以来「スマホとソーシャルを前提として、どの領域で事業を立ち上げるか」を深く掘り下げるようになる。最終的に食の領域に絞ったのは、前提条件に加えて「世界に比べて日本の方が課題が進んでいる領域でビジネスをするのがいいのではないか」と考えたからだ。

「海外で流行したサービスと同じようなものを数カ月後に日本で展開するやり方では、世界で戦っていくのは難しいのではないかと感じていました。それよりは世界的に見ても日本が進んでいる領域、日本のユーザーが特に課題を抱えているような領域に関わるサービスの方が、将来的に海外でも勝負しやすい。いくつか分野を検討する中で『食』に決めたのは、日本の食が量も質も高いレベルにあったからです。当時東京のレストランの数は世界の都市の中で1番多く、ミシュランで三つ星を獲得している店舗も1番多いとされるほどでした。その上、食領域の事業であれば使ってくれる人たちをハッピーにできるという感覚を持てたことも大きかったです」(武田氏)

Retty代表取締役の武田和也氏
 

スマホとソーシャルと食を掛け合わせる。そこからRettyのアイデアが生まれるのは時間の問題だった。とはいえ、2010年といえば日本でも大手のグルメサイトが複数存在していた時期だ。「食べログ」を筆頭にグルメ領域のクチコミサイトにも先行プレイヤーがいる状況下において、武田氏はどこに勝機を見出したのだろうか。

「やっぱりスマホの登場が1番大きくて。先行するサービスはPCから200〜300字ほどのちゃんとしたクチコミを、ブログの延長で書くような構造だと捉えていました。そこにスマホが普及するとどうなるか。誰でも簡単に発信ができるようになり『発信者が爆発的に増える』と思ったんです。飲食の領域でも必ずスマホを通じて大量のコンテンツが生み出されるようになる。だったらその体験にフォーカスしたSNSを作ろうと。また現地でFacebookが広がる様子を見て、これからは『誰が言ったか』がより重要になると感じていたので、それらの要素を掛け合わせながら整理した結果、Rettyに行き着きました」(武田氏)