朝日新聞の記事『街角の人、「不審者」と決めつけ「逮捕」 SNSへの動画投稿に批判』(9月21日)には、YouTuberの行動として、こんな事例も紹介されている。
《JR新大久保駅(東京都新宿区)の改札前。ユーチューブに8月20日に投稿された動画では、男性数人が1人の男性を囲み、時おり笑みを浮かべて問い詰める》
《「何で通りすがりの女の子見てるんですか」「一般女性が見たらキモいなって思うと思わないですか」》
《投稿者らは、男性が女性につきまとう動きをしていたと主張した。カメラの前で謝罪させたり、交番に連れて行ったり。男性の顔にモザイクがかかり、字幕には「容疑者」とあった》
《投稿した男性(30)が取材に応じた》
《ユーチューバーだといい、「痴漢、盗撮の撲滅運動をしている」と言う》
人気マンガ『こち亀』で
ジョークの題材になる警察官の職質
先述の野澤弁護士は、こう解説する。
「法律相談で名誉毀損(きそん)に関する質問はよくあるのですが、日本の刑法では、名誉毀損に関する規定が設けられています。具体的には、第230条では、事実の有無にかかわらず名誉毀損は原則として成立するとされています。第230条の2では、公共の利害や専ら公益目的のために真実を述べた場合は、例外的に罰しないと定められています」
「従って動画の公開は、現行犯であっても、当該容疑者のプライバシーや名誉に配慮して映像のほとんどをモザイク処理し、音声も変え、(大物政治家でもない限り)本人と特定されないようにすべきでしょう。私人逮捕系YouTuberの中には、警察官も顔負けの質問などを容疑者に対して現場で行っている者もいますが、相手を呼び止め停止させ質問する、つまり職務質問ができるのは警察官だけですので注意が必要です」
「とはいっても、職務質問は、そもそもの条文構造に加えて実務上の運用も白黒ハッキリしない部分があります。警視庁警察官(巡査長)の両津勘吉が主人公である人気マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)でも長たらしい条文の文言がジョークもの・クイズものとしてよく話題になっています。実際の法律運用においても、どこまで注意すればいいのかは明確にはされていない状況です」