管理職になりたくない、若手社員の本音とは?

――会社の外に、もっと魅力的な働き方があるだろう、と想像もできますね。

 外に行ったらもっといい条件かもしれないですよね。今は転職するか昇進しないと、給料は上がっていきません。

 近年の賃金カーブはすごくフラット化しています。昔は年次が上がるにともなって急上昇していましたが、今は緩やかな上昇カーブ。

 マネジャーになるか、転職市場に出て挑戦するかしか、若い人が給料をぐんと上げる方法はないと思います。

「1社しか経験しないで生涯を終える、っていいことなんでしょうか?」などという声を若手の会社員から聞くこともあります。

 そこそこいい会社に入って、悪くない給料をもらっている。でも、このまま昇進して管理職になっても、その働き方が魅力的だとは思えない。だから自分は、そうはなりたくない。

 10年近くすると、転職カードをいつ切るか、と考えるようになる。このまま管理職になるよりも、外に行ってプレイヤーでいたほうがいい、と思うのでしょう。

「言わなければならないこと」を言うためには「信頼の貯金」が必要

――フィードバックが大切であることはわかります。ただ、ハラスメントの問題を避けようと、言いたいことが言えない管理職もいます。

 上長として「言わなければならないこと」は、ありますよね。それは、ハッキリと言わなければならない。ただ、「言い方ってあるよね」と思います。

 決めつけるとか、詰問しちゃうとなると、ハラスメントとみなされる。決めつけないで、「私にはこう見えるよ。あなたはどう思う?」と対話していけばいいんです。

 それを相手が「ハラスメントだ」とラベルを打ったとしても、「違う」と言えるじゃないですか。正しいフィードバックの仕方を学んでないから、怖いんです。

「厳しいことを言う、イコール、ハラスメント、だから言えない。」その三段論法自体がおかしい。

――では、どうすればいいでしょうか?

「耳の痛いことを言わなければならないこともある、イコール、それは仕事。そのためには、日頃から信頼を貯金しよう。」と考えることが重要なのではないかと思います。

 ネガティブなことを1つ言うためには、3つポジティブなことを言わないといけません。貯金があれば、人間関係は崩壊しません。

 コミュニケーションとは一方的に投げつけるものである、という感覚も日本の組織には浸透しています。

 例えば「あいつにはあの仕事を振っときゃいいよ」とか、「あの情報を流しといて」みたいな言葉が、どこの組織でもあたり前のように使われています。

 そういうところにコミュニケーション観とか人間観が透けて見えます。

 何かを伝達する時に「放る」「投げる」「振る」といった表現をする。誰かが拾ってくれるだろう、と暗黙のうちに考えているわけです。

 相手にちゃんと受け取ってもらう、という発想を持たなければ、このすれ違いは収まらないのではないのでしょうか。

(取材・文 間杉俊彦)