高度な「優良誤認表示」という偽物もいる
しかしながら、もう少し高度な偽物がいる。その種の人々はずる賢い。一見すると立派に見えるし、ある程度は立派だったりもする。では、何が偽物かというと、景品表示法に言う「優良誤認表示」の状態にあるということなのだ。
優良誤認表示とは、「具体的には、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当」(消費者庁HP)すること。その方法が巧みであるがゆえに、完全にだまされてしまうのである。
では具体的に記述してみよう。
<優良誤認表示その1>
能力を過小評価しつつ他人を持ち上げる人
このタイプの人は、自分の成果を謙遜して他人のおかげだと言うのだが、裏に魂胆がある。彼らが感謝するのは、自分の上司筋や、名前を出すことが自分にとってメリットのある外部の人物である。実際に活躍した特定の部下ではない(部下の名前は決して出さない)。感謝は自己の地位を高めようとするための行為である。このような行動をする人は、他人を利用する、実に計算高い人といえる。
<優良誤認表示その2>
逆境体験を誇張する人
実際には、それほど困難ではなかった状況を大きな逆境として語る人がいる。彼らは、自己の経験をドラマチックに見せるために事実を歪曲し、自分への同情や尊敬を引き出そうとする。逆境をものともせずに跳ねのける本物は、逆境を特別なものとして意識していない。よって大げさに語ることもない。
<優良誤認表示その3>
重要な人物からのアドバイスで人生が変わったと主張する人
このタイプは、亡くなった大物やめったに会えない人物から、人生を変える自分向けの特別なアドバイスを受けたと主張する。これにより、自分自身に特別な価値があるかのように見せかけることができる。しかし、そのような出来事があったという可能性は低いため、この行動は自己の重要性を演出するための虚偽である。よく知らない人からは、すごい人から目をかけられた優秀な人だと思ってもらえるが、もちろんそれは計算のうちである。
<優良誤認表示その4>
計算された服装と振る舞いができる人
こういう人は、自分をよく見せるために服装、立ち居振る舞い、語り口などを細かく計算している。自分の真の姿や感情を隠し、外見上のイメージを構築することに重点を置いている。このような行動は、本物の自己よりも外見上の印象を重視する表面的な性格を示している。
<優良誤認表示その5>
社会貢献への情熱を語る人
彼らは社会貢献活動を、自分自身のブランドやイメージを向上させるためのツールとして利用する。彼らにとって、慈善活動は公共の福祉よりも自己の名声や地位を高める手段である。
<優良誤認表示その6>
教育への情熱を語る人
教育者としての情熱を持っているように見えるが、実際には教育よりも自己の影響力や支配力を重視している人である。教育に情熱を持っているように見えると、社会的に良い評価を得やすいから、情熱があるフリをしているにすぎない。しかも彼らは、教育の名の下に自己の思想や信条を強要することがある。
<優良誤認表示その7>
外部メディアを巧みに利用する人
このタイプの人は、目立つことだけをやりたがり、他人の成果も自分の成果のごとくメディアで語り、耳に心地よいキーワードを並べてメディアの注目を集めようとする。しかし、実際には彼らの行動は結果を出すことに対して本質的でなく、内部での評判は低い。
以上、「優良誤認表示」の人をいくつか紹介したが、難しいのは、上記のタイプに見える人の中には、本物もいるということだ。
というのは、もともと前述の行動は、本物が本物として魅力的な要素から、偽物がまねできるところを抽出してその要素で仮装しているからである。よって、前述のタイプに見えるのは、偽物であるかもしれない可能性を示す重要な要素ではあっても決定的な証拠とはいえない。