Bluetooth ビーコンにより発信される情報は、「識別子」と呼ばれるスマホ本体とひも付けて情報をやり取りする。この識別子は毎日ランダムに変わり、ウイルスの潜伏期間に相当する14日間が経過すると破棄される。

 識別子の情報はスマホの中のみに保存され、機能を提供するアップルやグーグルからは取得できない。また、接触確認アプリのサービス上には保存されるが、識別子を見ただけでは、スマホ保有者の情報は分からないようになっている。

「誰が使っているのか」は国も分からない仕組み

接触確認アプリの仕様 政府CIOが公表した「接触確認アプリ及び関連システム仕様書」より接触確認アプリの仕様 政府CIOが公表した「接触確認アプリに関する仕様書等の公表」より

 日本の接触確認アプリでは「位置情報」は記録されない。保存されるのは、他のスマホが発している識別子と「接触した記録」だ。アプリを導入したスマホ同士が近くにある場合に、相手方の識別子と日時を元に計算された「接触符号」がお互いのアプリに記録される。それをもって「接触」と見なすわけだ。

 アプリ利用者の感染が発覚した場合、接触した履歴がある人、つまり、感染が発覚した人の識別子を記録しているアプリに通知が送られる。濃厚接触の疑いがある人として、保健所の調査の対象となる。

 感染者がアプリを使っていたとしても、識別子を陽性として登録するかどうか(通知を送るかどうか)については保健所にて改めて同意を取る仕組みとなっている。また、通知を送られた側は、どの陽性者の識別子かは特定できない。つまり、誰が感染したかの情報は明らかにならないよう、プライバシーに配慮された仕様となっている。

 以上をまとめると、接触確認アプリの仕組みは次のようになる。

・接触確認アプリは、「スマホとスマホが接触した履歴」を保存する
・感染が発覚すると、接触者に通知が送られる
・位置情報は保存されない
・アップルやグーグルは仕組み上、個人情報を把握することができない
・政府が取得する個人情報は、感染発覚後に通知に同意した人のみ

 なお、接触確認アプリでは日本独自の機能として、「1日に接触した人数」をアプリで表示する機能の導入も検討されている。 政府はこの機能に行動変容を促す効果がある(接触を避けるようになる)と見ているようだ。アップルやグーグルが提供している技術を用いて実現するには課題があるとしており、解決次第、実装される見込みだ。

目標の「人口の6割導入」達成が困難なお粗末なワケ

 安倍首相は5月25日に行った緊急事態宣言解除の記者会見において、接触確認アプリをクラスター対策強化のカギであると説明し、以下のように付け加えた。

「オックスフォード大学が発表したシミュレーションによれば、このアプリが人口の6割近くに普及し、濃厚接触者の早期の隔離につなげることができれば、ロックダウンを避けることが可能となる」